【伊藤美玲のめがねコラム】第55回「受け入れること、抗うこと」
ここ最近、女性ファッション誌を読む機会が増えました。
もともと雑誌が大好きな私。ライターになってからは自分の仕事の主戦場である男性誌を読むことが多かったんですが、一読者として女性誌に目を通すことが、仕事の合間の良い息抜きになっています(あ、もちろん女性誌の仕事も喜んでお引き受けします!)
ファッション誌はいろいろあれど、昨年40代に突入したこともあり、「40歳からは・・・」「45歳大人女子の・・・」というキャッチコピーはベタに気になってしまうもの。やっぱり響くんですよ。これまで20代になったとき、30代になったときもそれぞれ思うことはありましたが、40代というのはこれまで以上に意識せざるを得ない年齢な気がしてならないのです。
決して年齢を重ねることをマイナスに捉えているわけではありません。でもね、これまでに比べて明らかに体重は落ちにくくなり、食事に気を遣ったところで現状維持がやっと。肌のハリツヤは衰え、髪には白いものが現れ始めてきて……。これだけ明らかに見た目の変化が出てくるわけだから、20代~30代前半のときと同じようなファッションでは、少々不釣り合いになってしまうわけです。
でも、いろいろ雑誌に目を通してみて、ちょっと安心しました。てっきり「40代になっても若々しく!」ってな感じで、年齢に抗うことが美徳とされているのかと思っていたものですから……。体型の変化を前提にしたうえでの服選びだったり、くすんだ肌にも合う色のポイントメイクだったり。はたまたお洒落な白髪カラーリングなどなど、もちろん選ぶ雑誌によって違いはあれど、その多くは“年齢による変化を受け入れたうえでの提案”がメインだったんですね。
一時期は“美魔女”なんかが話題になったりもしましたけど、今はグレイヘアがトレンドになったりなど、無理な若作りよりも自然体でいることが素敵だとされているのかなと改めて感じたのでした。
こうした過渡期のなかで、誰にでも訪れるのが老眼です。これまでめがねを必要としなかった人にとっては、大きな変化であることは間違いないでしょう。それまで眼鏡店にお世話になったことがないとあれば、なおさらです。
この場合、めがねに頼らないことが自然体? いえいえ。眉間にシワを寄せたり、スマホやメニューを遠ざけて見ている様子は、どちらかといえば不自然です。めがねをかけることで“老けてしまう”と思っている人は少なくないけれど、そうした不自然な振る舞いのほうがよっぽど年齢を感じさせてしまうもの。老眼に抗う姿は、あまりスマートではないと私は思います。
まずは、変化を受け入れること。そのうえで少しでもきれいになろうとする対策を練るのは、ときに楽しいことだったりします。
老眼のスタート。最初は抗いたくなるかもしれないけれど、せっかくなら自分の目と向き合う良い機会だと捉え、対策を楽しんでみてはいかがでしょう。老眼鏡が必要になる=身に着けられるアクセサリーがひとつ増えたわけですからね。めがねをかけることを避けていたり、テキトウに購入したものをイヤイヤかけているようでは、目にも精神的にも負担になってしまいます。
そんなことを語っていながら、かくいう私も目以外の対策はまだまだです。でも、悲しいかな時計の針は戻せないもの。だったら少しでも楽しく前向きに針を進める方法を、これから考えていきたいと思います。
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。