【伊藤美玲のめがねコラム】第3回「私の人生を変えたお店」
めがね選びは、お店選びから。前回のコラムではそんなお話しをさせてもらいました。
今では行きつけのお店がいくつかありますが、じつは私も11歳でめがねを掛け始めてから20代半ばになるまで、お気に入りのめがねに出会えていない“めがね難民”のひとりでした。そんな私が、とあるお店で受けた接客をきっかけにめがね好きに拍車がかかり、めがねを専門とするライターにまでになったのです。
そもそも私は強度近視なので、レンズが分厚くなってしまったり、目が小さく見えてしまったりと、何度めがねを作ってもその仕上がりに満足したことがありませんでした。お店の人には当然のごとく超薄型とカテゴライズされた高いレンズを勧められるしね……。めがねが好きとはいえ、いや、めがね好きだからこそ納得のいく仕上がりにならないことに絶望的な気持ちになり、めがねを新調するたびにガッカリすることも少なくなかったのです。
ところが会社勤めをしていた20代半ばに、新宿の駅ビルのとあるめがね屋さんに入ったときのこと。とても気さくなスタッフさんから接客を受け話が弾み、気が付くと私は今までめがねの仕上がりに感じていた不満などをすべて打ち明けていました。
すると「レンズは外周に向かうほど厚みが出てくるので、径の小さいフレームを選べば必ずしも超薄型レンズを使わなくてもレンズを薄くすることができるんですよ」と、スタッフさん。
(え?私今まで15年ぐらいめがね買ってきたけど、そんなこと初めて聞いたよ……。フレーム選びでそんなことも解決するの!?)
そうして選んでくれたのは、Face a Face(ファース ア ファース)の1本。フロントは紫、テンプルがエンジとネイビーというシックな3色使いのメタルフレームで、お堅い仕事でも極力個性を出したい、という私の要望にピッタリなセレクトでした。
そして、スタッフさん。「これはフランスのめがねブランドのフレームです。デザイナーが現代建築にインスパイアされたという立体的なデザインが特徴的で……」
(え?フランスのめがねブランド?てか、めがねにデザイナーさんがいるの??)
スタッフさんのレンズに関する目鱗なアドバイスと、ブランドについての詳しい説明、そして何よりそのデザインが気に入ったこともあり、当時の私には少々高い買い物だったけれど即決したのでした。もちろん、仕上がりにも満足。オフィスでめがねを褒められれば、「これはフランスのめがねで…」とウンチクを披露してムフフと悦に入ってたものです。
こうしてお店との運命的な出会いによって、私はめがね難民を卒業することができたのでした。
それ以来、私はさらにめがねの世界にぐっと引き込まれて、“モード・オプティーク”などめがねの雑誌を買ってブランドについて調べたり、誌面で紹介されているめがね屋さんに通ったりするようになるのです。
私のめがね好きに拍車を掛けてくれたそのスタッフさんには、今でも本当に感謝しています(まぁ、その方も自分の接客がきっかけで相手がめがねライターになっちゃうのもビックリだろうけれど)。
今振り返ると、そのスタッフさんが私のめがねに対する不満や要望をしっかり引き出してくれたから、納得のいく1本に出会えたのだなぁと思います。
なので、ぜひめがね屋さんに行ったら、「どんなシチュエーションで掛けるのか」「どんなイメージになりたいのか」「今のめがね、見え方にどんな不満があるか」をぜひスタッフさんに話してみてください。それにしっかり応えてくれるお店なら、運命の1本を提案してくれるかもしれませんよ。
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。