【伊藤美玲のめがねコラム】 第98回「2022年の“めがねトレンド”を振り返る!」
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早いもので、今年もあと数日で終わり。この時期になると、テレビや雑誌などでも1年を振り返るような企画をよく目にしますよね。というわけで、私も個人的に今年のめがねのトレンドについて振り返ってみました。
主張のあるデザインが急増中
2022年のめがねシーン。ひと言でいえば、「めがねの主張が強くなってきている」という印象でしょうか。なぜこんなぼんやりした表現になってしまうかというと、海外(主にヨーロッパ)と日本ではトレンドの流れに大きな違いを感じたからです。
全体的にフレームのボリューム(厚み)は増し、サイズは大きくなってきています。それゆえ、主張の強いものを掛けたいという気分は、世界共通なのかなという印象です。デザインも、これまでのオーセンティックで上品なものが多かったときに比べると、良い意味でクセのあるものが増えてきたように思います。メタルフレームでも、たとえばシェイプが大きかったり、ハイブリッジ気味だったり、ラインが直線的であったりなどなど……。シンプルになじませるというよりかは、アクセントのあるデザインが気分です。
そしてプラスチックについて、これまでは淡いクリアカラーが人気でしたが、海外ではカラーがより鮮やかに。クリア生地でなく不透明で鮮やかな発色のものも多く見られました。展示会でも、カラフルなめがねを前にワクワクすることが多かったなぁと。
そう、このカラーこそが日本と海外の大きな違いで。日本では、この“主張”が「よりシックな色」という方向に向かっていったように思うのです。それにより、10数年ぶりに黒縁フレームの人気が再燃してきたのが、今年の日本のめがねシーンにおけるトピックだったのではないかと思います。
黒縁めがね人気が再燃した理由とは?
日本において黒縁の人気が再燃した理由には、いくつかあると考えています。そのひとつが、マスクとの関係性です。コロナ禍となりマスクをつけ始めたときは、その姿にわりと違和感がありましたよね。そのため、めがねは目元に馴染ませる方向で淡いクリアカラーに人気が集まりました。ところが、マスク姿にも慣れてくると、今度は目元にマスクに負けない存在感が欲しくなる。さらにカラーマスクをつけていると、めがねのカラーとケンカしがちに。そのため、目元はシックなめがねで引き締めたいというニーズが出てきたのかなと考えています。
また、今年の秋はJINSやZoffが黒縁を打ち出していたことも、その気分を後押ししたのでしょう。8月にJINSの展示会へ行った際、JINS CLASSICが刷新され、黒やデミ柄の太縁がズラりと並んでいたのが、とても印象的でした。Zoffも今年は黒縁推しでしたよね。とくに女性に向けて黒縁を推す広告をよく目にしました。この2社による店舗での展開と広告の量を考えたら、黒縁が気になる人が増えるというのも納得です。
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多様な黒縁めがねを楽しんで!
黒縁といえば、思い起こされるのが約10年前のブームでしょう。あのときは世界的なトレンドでしたし、女性がスタイリングのハズしとして大きな黒縁を掛けたりして“アラレちゃんめがね”(※1)が再来したと言われていたのも記憶に新しいところです。
現在がその当時と大きく違うのは、女性がジャストサイズで美しく掛けられる黒縁が充実しているという点。春の展示会について書いたコラムでもお伝えしたように、今年は“フチが太くて、サイズが小さい”フレームを打ち出していたブランドが、日本のブランドでいくつか見られました。だから、以前の借り物のような大きな黒縁でなく、美しく洗練されたお洒落としての黒縁を楽しめるはずです。
また、10年前は黒縁といったらウェリントンとボストンばかりだったのに対し、現在はクラウンパントや多角形、スクエアなどシェイプが充実。だから、クラシックに限らず、モードっぽく掛けられたりなど、様々なスタイルで楽しむことができます。最近では、横長気味のスクエアも再び見られるようになりました。今年復活したLunetta BADAの黒い横長スクエアは、復刻でありながらとても新鮮に感じられた方も多かったのではないでしょうか。
また、黒では存在感があり過ぎると感じる人に対し、クリアグレーという選択肢が豊富に用意されているという点も今の特徴でしょう。
以上が、2022年に私が取材の現場で感じたトレンドです。
念のため付け加えておくと、今回「今、これを掛けるべき」という意図でトレンドを取り上げているわけではありません。基本的には、それぞれが自分の好みやスタイルに合ったものを掛けるのが一番だと思っています。ただ、やはりトレンドは時代を写す鏡ですから、記録しておくことも大事。数年後、めがねのトレンドを振り返るなかで、この記事が誰かのお役に立てば幸いです。
※1 アラレちゃんめがね:
鳥山明による漫画『Dr.スランプ』の主人公「則巻アラレ」がかけている黒縁めがね
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。