【伊藤美玲のめがねコラム】第90回「春の新作めがね展示会速報。今シーズンの特徴は!?」
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4月の上旬、めがね業界は春の展示会シーズンを迎えていました。都内20か所以上で展示会が開催されており、期間内ではすべて回りきれないほど。残念ながら行かれなかった会場もあるのですが(ごめんなさい……)、展示会取材を通して感じた今シーズンの流れをまとめたいと思います。
多角形、クリアカラーはまだまだ継続
そもそもめがねのトレンドは、シーズンごとに毎回大きく変わるものではありません。10年程前の黒セルブーム、その反動からの繊細なメタルフレームへの流れはわかりやすかったけれど、現在は素材も形もカラーも、その傾向はブランドによってさまざまです。
そうしたなかでも、ここ数年提案の多かった多角形フレームは今季も多く見られました。もはや定番化したといってもいいかもしれません。また、同じくここ数年来トレンドであるクリアカラーの提案もまだまだ多かった印象。春夏は、とくにクリアカラーに惹かれますね。
海外(主にヨーロッパ)ブランドはカラフルなものが多く、デザインのアプローチも多様。一方、日本のブランドはシックなクラシックテイストの提案が多かったのも印象的でした。
“細くて大きい”のトレンドが加速
各ブランド様々な打ち出しがあったなか、これから個人的に注目したいのが「ビックシェイプ」です。昨年の秋冬から見られたのですが、今季はその流れが加速。単に大ぶりなだけでなく、“線は細いのに大きい”というのが今の傾向で、その絶妙なバランスが新鮮に感じられます。
ヨーロッパのブランドに多くみられる流れですが、日本ではYELLOWS PLUSの新作がとても良い感じでした。少しアンバランスに感じられるぐらい大きいのに、イエローズらしい品の良さもあって。
フレームが細くて大きいと目の周りに余白が生まれ、抜け感のある雰囲気になります。この抜け感をうまい具合に活かしてスタイリングしたいなぁと思うところです。
“太くて小さい”サイズ感も新鮮!
そして、今季の新しい動きとして注目なのが、先ほどの「細くて大きい」の正反対となる「太くて小さい」デザインです。
じつは最近、若い世代を中心に黒セルの人気が高まっているのだそうで。なんでも、最近はヘアカラーが明るめの人が多いため、マスクの目元は濃い色で引き締めたほうがバランスが良いからなのだとか。なるほど~と思いました。
そんな傾向を反映してか、今回目立っていたのが小さめサイズの黒セルです。10 eyevanやpropoの新作に見られたのですが、線の太さを残しながらレンズシェイプを小さくしたバランス感が、新たなトレンドを感じさせました。
こちらはBOSTON CLUBの新作。実際に掛けてみると、先ほどの「細くて大きい」とは対照的に、ぐっと目元の印象が強くなるのがわかります。デルブーフ錯視(※1)により、目が大きく見えるかも? レンズ径も小さいので、強度近視の方も度付きで楽しみやすいかと思います。
というわけで、個人的に「細くて大きい」「小さくて太い」フレームに注目した今季。とはいえ、視点が変われば違うトレンドも見えてくるぐらい多様なデザインが発表されていたのも事実です。各ブランドやめがね店さんのSNSではすでに新作が紹介されているので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。
※1 デルブーフ錯視:
大きさが等しい二つの円を並べ、一方を大きい同心円で、もう一方を小さい同心円で、それぞれの円の外側を囲んだ場合、前者の円の方が後者よりも小さく見えること。
BELLINGER
YELLOWS PLUS
10 eyevan
BOSTON CLUB
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。