AIが音声案内をする点字ブロック!? 金沢工業大学が考案する新たな歩行サポートシステムとは?
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目の不自由な方のために、駅や歩道などに設置されている黄色い点字ブロック。1967年に岡山市内で初めて設置されてから50年以上が経った今では、すっかり当たり前の存在になっています。ただ、点字ブロックだけでは「行先に何があるか」などの細かい情報まではわかりません。そこで考案されつつあるのが、点字ブロックとAI技術を組み合わせた画期的な歩行サポートシステムです。先月には金沢駅で実証実験が行われ、着々と実用化に向けて研究が進んでいます。
まずは点字ブロックについて学ぼう!
常日頃、点字ブロックの上に物を置いたり、点字ブロックの上に立ち止まったりしないように注意している方は多いと思います。でも、点字ブロックについて改めて勉強したことがある方はそんなに多くないのでは?まずは、点字ブロックそのものについておさらいしましょう。
点字ブロックは、日本人が発明したものです。岡山県に住む三宅精一氏は、視覚障碍者の福祉向上に尽力した親友・岩橋英行氏の助言を受け、私財を投げうって兄弟で点字ブロックの開発に励みました。そして1967年、岡山市内に230枚の点字ブロックを設置。その後も各地に寄贈を続けていき、ついに1970年には、東京都道路局の予算で高田馬場駅に1万枚が設置されるに至ります。これを機に、点字ブロックは日本全国に留まらず、世界各地に設置されるようになっていったのです。
点字ブロックには、「点状ブロック」(警告ブロック)と、線状ブロック(誘導ブロック)の2種類があるのをご存知でしたか?「点状ブロック」は注意を促すためのもので、「線上ブロック」は、方向を示すためのものです。「点状ブロック」は、階段の手前や駅のホームの端など、ポイントを指し示す必要がある場所にあり、「線状ブロック」は、歩道の向きに沿って並べられていたりします。ぜひ、注意して見てみてください。
「点状ブロック」とAI技術を組み合わせると?
今回、金沢駅で行われた実証実験は、「点状ブロック」とAI技術を組み合わせたものになります。「点状ブロック」につけた黒い印をカメラで読み取り、音声で道案内をするという仕組み。利用者は骨伝導ヘッドホン、スティックコンピューター、モバイルバッテリーなどを身に着け、白杖かウエストバッグに取り付けられたカメラで床面を撮影しながら情報を読み取っていきます。
JIS規格で定められた「点状ブロック」の突起の数は、5×5の25個。その突起を塗りつぶすことで作り出せるパターンは、3000万種類ほどになります。そのパターンごとに、あらかじめ用意された音声メッセージが流れるという仕組み。「右は駅改札方向です。左はバス乗り場方向です」など、利用者が向かってくる方角によって、案内の内容も変わります。現在は、スティックコンピューターの中に保存された音声メッセージが流れますが、将来的にサーバーから送信されるようになれば、緊急時やイベント時などの状況に応じて、臨機応変にメッセージ内容を変えることも可能になります。
石川県金沢市と金沢工業大学による実証実験は2019年1月12日と13日の2日間にわたって行われ、視覚障碍者だけでなく、外国人も被験者として参加し、多言語での運用も検討されました。実験の中では、歩行中の撮影では認識が困難で音声メッセージが流れないことがある(一旦立ち止まらないといけない)など、いくつかの課題点も浮かび上がったとのこと。
点字ブロックの誕生物語が、朝ドラ『まんぷく』並にドラマチックで志の高いものだったことを、私は今回はじめて知りました。そして、金沢では今、さらに大きな理想に向けた研究開発が進められています。私たちにとって点字ブロックが当たり前になったように、点字ブロックとAI技術の融合が当たり前になる未来は、すぐそこまできています。
テレビ局で営業・イベントプロデューサーとして勤務した後、退社し関西に移住。一児を育てながら、映画・演劇のレビューを中心にライター活動を開始。ライター名「umisodachi」としてoriver.cinemaなどで執筆中。サングラスが大好き。