【伊藤美玲のめがねコラム】第79回「ポジティブな提案」
先日、表参道にあるめがね屋さん「blinc vace」にて、イギリスのアイウエアブランド「キュービッツ(CUBITTS)」のポップアップイベントが行なわれていました。
このコラムがアップされる頃には残念ながら終わってしまっているのですが……。それなのに今回このコラムで取り上げたのには、ワケがあります。それは、イベント用に作られたイメージビジュアルがとても印象的だったからです。
それが、このトップ画像のもの。左は、女優の野村麻純さん。真ん中は、ブラジリアン柔術で4度世界王者に輝いた湯浅麗歌子さん、右はインテリアデザイナーの吉田裕美佳さん。それぞれの道で活躍されている方たちとあり、写真からもその生き生きとした姿が伝わってきます。それに、めがねをかけている姿が自然ですよね。しかも、皆さんリアルに度付きのめがねをかけているんだそうです。
なぜこうしたビジュアルにしたのかと伺ったところ、イベント初日が3月3日でイベント名を「ヒナマツリ(HINAMATSURI)」にしていること、また、3月8日が国際女性デーであることにちなんだのだそう。
「あれ、キュービッツって女性のブランドというわけではなかったような……」。
そう思ってしまった私は、自分の感覚が前時代的であることを反省しました。だって、メンズ、ウイメンズと揃えているわけだから、女性を起用したって不自然ではないわけで……。
そう。私たちはイメージビジュアルに男性が使われることに、慣れ過ぎてしまったのだと思います。でも、今後こうして女性がめがねを素敵にかけているイメージの打ち出しが増えていけば、もっともっと女性がポジティブにめがねを楽しめるようになると思うんです。
今でこそ女性向けのめがねブランドが増え、女性モデルを使ったビジュアルも増えてきたけれど、少し前まで“女性”といえば、老眼世代を意識したものが多かったように思います。対して、コンタクトの広告は旬の女性タレントを起用しているものが多い。これでは、業界側が自らターゲットを狭めてしまっているようなものです。
果たしてこれまでめがね業界は、めがねを素敵にかけこなしている女性像を打ち出せていたのか。ネガティブな印象を拭いきれていなかったことが、少なからず「職場で女性だけめがね禁止」などといった偏見の原因となってはいなかったか……。
その点については、じつは自分にも反省があります。
少しでもフツーの女性がめがねをかけているスタイルサンプルを提供できればと思い、私はインスタグラムに自撮りをアップしていますが、そのほとんどは度無しのめがねをかけたもの。展示会での撮影をメインにしているから、という理由もあるのだけど、やっぱり自分にも度付きより度無しのほうが見栄えがいいという意識があったわけですよ。私はかなり度数も強いし、度なしでかけていたほうが、めがね自体の見栄えも良くなるんじゃないかって。
でも、それは自ら度付きのめがねを否定することになっていたのではないか。最近、とあるめがね屋さんと話していて、気付かされました。コンタクトをしてダテめがねをかける、そんな私のような人は少数派。だったら、度付きでのスタイルサンプルも、もっと提案しなくてはと。
度付きのめがねを素敵に、そしてポジティブにかけること。それこそが、めがねへの偏見に抗うひとつのアクションになる。このイメージビジュアルには、きっとそんなメッセージも込められているのだと思います。
blinc vace(ブリンクベース)
住所:東京都港区北青山3-5-16 1F
電話:03-3401-2835
営業時間:平日12:00~20:00 土日祝日11:00~20:00
定休日:月曜日(祝日の場合は振替で火曜日休業)
オフィシャルサイト:
http://blinc.co.jp/blincvase/
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。