あなたの変化に、そっと寄りそう

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【伊藤美玲のめがねコラム】第69回「きれいになれるめがねって?」Vol.4―HUSKY NOISEデザイナー・鈴木康史さんに訊く―

【伊藤美玲のめがねコラム】第69回「きれいになれるめがねって?」Vol.4―HUSKY NOISEデザイナー・鈴木康史さんに訊く―

| めがね新聞編集部

めがねに関わる方たちと「きれいになれるめがね」について考えるこの企画。今回お話しを伺ったのは、ウィメンズブランド「HUSKY NOISE(ハスキーノイズ)」のデザイナー、鈴木康史さんです。

最近同世代の友人のめがね探しに同行することが増えたのですが、いろいろかけてもらった結果、最終的に選ばれることが多いのが、このハスキーノイズなんです。

お洒落なめがねが欲しい。でも、個性の強いものではトゥーマッチ。そして、まだめがねに慣れていないからこそ、かけ心地は良いほうがいい。そんなめがねデビューを果たす大人の女性が求める要素が、ちょうど良く詰まっているからかもしれません。その絶妙バランスはどう生み出されているのか。詳しく話を訊きました。

OLさんがオン&オフかけられるめがね

第69回「きれいになれるめがねって?」Vol.3 ―HUSKY NOISEデザイナー・鈴木康史さんに訊く―

今でこそ女性向けのめがねブランドは増えていますが、ハスキーノイズはもう長いですよね。

鈴木2004年からスタートしているので、15年になりますね。僕がデザインを手掛けるようになって、6年目になりました。

鈴木さんが手掛けるようになってから、よい意味でブランドの雰囲気に変化が出てきているように思います。これまでどちらかというとフェミニンなデザインが多かった印象なのですが、ここ数年は洗練されたデザインも増え、個人的にもより幅広い女性にオススメしたいブランドになりました。

鈴木ありがとうございます。そう言っていただくことも増えてきたんですが、基本的にブランド設立当初から「OLさんがオン&オフかけられるめがね」を作るという考えは、大きく変わっていません。それをベースにしつつ、僕が手掛けるようになってからは、「Be Simple,Be Natural」をコンセプトに掲げています。基本的にはシンプル&ベーシックで、自分らしく、肩肘張らずにお洒落を楽しめるめがねをモットーに商品作りをしていますね。

そうした存在は、とてもありがたいですね。「お洒落なめがね=個性が強い」となりがちなんですが、人には様々な生活シーンがあるので、個性的なものばかりをかけてはいられませんから。

鈴木はい。多くの方たちにとって、使いやすいめがねでありたいです。

とはいえ、ハスキーノイズはシンプルだけど平凡なわけではないし、程よいトレンド感や女性らしさも備えています。そこが絶妙だと思うのですが、鈴木さんはデザインされるうえで、どんなことを大切にしているんですか?

鈴木サイズ感とシルエットですね。洋服だと、サイズ感やシルエットは皆さん意識しますよね? 例えば影絵みたいに、ディテールや色がわからない状態で服のシルエットだけが黒く浮かび上がっても、自分の好きなスタイルか判断できると思うんです。じつはシルエットってそれぐらい重要なものなんですよね。

あぁ、たしかに。

鈴木同じように、めがねもシルエットだけで見たときに美しいと思えるかどうかを大事にしています。たとえばヨロイパーツ(※1)に丸みを持たせたり、板抜きのフロント(シート状のチタンからプレスで打ち抜いて作ったフレームの前面部の事)でもエッジを落として仕上げるとか、そうした柔らかさというのは、女性らしいシルエットに反映されてくるので。

第69回「きれいになれるめがねって?」Vol.3 ―HUSKY NOISEデザイナー・鈴木康史さんに訊く―

モノクロの線だけで見たとしても、女性らしさがあるデザイン。なるほど。最近のハスキーにはシックな色使いも増えてきましたが、それでも女性らしく見えるのは、そうしたこだわりがあるからなんですね。

鈴木あとは、やっぱりサイズ感も大事ですよね。同じ洋服でもサイズ感が違うと、全然お洒落じゃなくなったり、似合わなくなってしまったりするのと同じで。テンプル(※2)の長さや鼻幅などにも気を遣いながら、女性向けに設計しています。

サイズ感は、本当に大事なポイントですよね。人それぞれ顔の大きさなどは違うとはいえ、やはり女性はウィメンズブランドから選んだほうが、自分に合うものは見つけやすいですから。

主張し過ぎない発色が顔なじみの秘訣

第69回「きれいになれるめがねって?」Vol.3 ―HUSKY NOISEデザイナー・鈴木康史さんに訊く―

ウィメンズブランドらしいカラーバリエーションも魅力ですが、色についてはどんなことにこだわっていますか?

鈴木先ほどお話ししたとおり、“使いやすいフレームにしたい”というのが最初にあるので、アジア人の肌に馴染みやすい色というのは考えていますね。たとえばゴールド×ブラックのフレームがあるんですけど、あまりパキっとコントラストが出ないような発色にしているんです。これパっと見は黒なんですけど、じつは濃いチャコールグレーで。ゴールドも、黄みを抑えて顔なじみを高めています。

第69回「きれいになれるめがねって?」Vol.3 ―HUSKY NOISEデザイナー・鈴木康史さんに訊く―

その絶妙な色出しが、顔なじみの秘訣なんですね。

鈴木僕は女性ではないですけど、時には自分の肌に合わせてみたりしながら、出来上がるまでに何通りもの色を試しています。あとは、メイクのトレンドを意識することも。僕、じつは結構コスメ好きなんですよ(笑)。奥さんの買い物に付いて、化粧品カウンターへ行ったりしますし。たとえば、THREEやSUQQU、RMKも見ますし、最近ではSHIROとかto/oneとか……、日本のブランドが多いですね。

わぁ、そのラインナップからも、本当にコスメがお好きなのが伝わってきます(笑)。ユーザー側の女性からしたら、男性のめがねデザイナーさんがそうした感覚をわかってくれているのは嬉しいです。

鈴木女子力高いねって、よく言われます(笑)。

そうした感覚を共有できてこそ、あのカラーリングが生まれているわけですね。

鈴木作っていて、自分も楽しいですからね。でも、色決めは楽しさもある反面、いつも苦しみます。思うように色が出ない苦しみもあれば、そもそも基本的に正解があるものでもない。少しでも自分のなかの正解に近づけられるように、ギリギリまで悩んでいます。いずれにしても、かける人の“らしさ”を生かしてかけられるような色、というのは意識していますね。

めがね単体だけではなく、かけたときに“美しく見えるか”がポイントなんですね。

ハスキーノイズが考える、女性らしさとは?

鈴木女性らしさという点でもう1つこだわりを挙げるなら、レンズシェイプですね。ハスキーのレンズシェイプは、“泣かせ気味”。つまり、目尻の部分にくる上側のリム(※3)のサイドを、ちょっと下げ気味にしているんです。

第69回「きれいになれるめがねって?」Vol.3 ―HUSKY NOISEデザイナー・鈴木康史さんに訊く―

ほぅ、それは意外です……! つり上がっているほうが女性らしいという固定観念があったので……。

鈴木言われないとわからない程度なんですけどね。泣かせ気味のほうが優しくなる……、という言い方だけでは片づけられないんですが、女性らしく見えると僕は思っています。

柔和な雰囲気になるかもしれないですね。ハスキーを選んだ私の友人は、いずれもナチュラルで優しい雰囲気を好むタイプだというのも、何か関係しているような気がします。
では最後に。鈴木さんが思う、めがねにおける女性らしさって何だと思いますか?

鈴木やっぱり、最初にお話ししたサイズ感とシルエットなんだと思います。たとえば、今韓国では大きめのめがねが流行っていますけど、男性から見たときにあれが“女性らしい”と感じるかといえば、そうは思わないんですよね。同じラウンドやボストンでも、サイズ感とシルエットが変わることで、ぐっと女性らしさが上がると思うんです。

メンズのデザインを単に小さくして明るい色にすれば女性用になるかといったら、そうではない。サイズと同時に、ラウンドやボストンといった形で単純に分類できない絶妙なシルエットが、大事な要素になるというわけですね。なるほど。今日はありがとうございました!

取材を終えて

「シルエットだけで見ても、女性らしく見えるデザイン」。今回印象に残ったのは、その言葉でした。フロントのシェイプはもちろん、丸みを帯びたパーツやテンプルの形状、などなど。デザイナーさんは、細部の見え方まで気を遣いデザインをしています。ひとつひとつのパーツは小さくても、めがねは顔の中心にくるものだから、少しの違いが顔の印象に大きく影響を与えるわけです。

そして、やっぱりサイズ感も大事。私自身も、若い頃はボーイッシュな雰囲気とかオーバーサイズでのハズしが可愛く思えたし、それなりにコーディネートとして成立していたのだけど、40歳を超えると正直それが難しくなってきました。

大人の女性としての知性や美しさを演出するためには、サイズ感とシルエットが重要。その2つを備えためがねを探すとき、ハスキーノイズをはじめとした女性向けのめがねブランドは強い味方になってくれるはずです。

※1 ヨロイパーツ:リムからテンプルにつながるめがねの両端部分の事。
※2 テンプル:こめかみを経由して、耳にかける部分の事。
※3 リム:レンズのまわりを囲む縁の部分の事。