【伊藤美玲のめがねコラム】第57回「春の展示会速報」
いやー、めがね業界の皆様。春の展示会お疲れさまでした!
めがね業界では4月9日~11日の3日間をメインに展示会が行なわれ、新作が発表されました。昨年の春の展示会の写真を見返すと私は半袖の服を着ていたのだけれど、今年は冬に戻ったかのような日もあり、寒さに震えながら各会場を行き来した日もありました。でも、会場に入ると一転。華やかなカラーの新作を見ると、気分はもうすっかり春なのでありました。
そう。華やかなんですよ。今季は、昨シーズン以上に明るい色をたくさん見た気がしました。7~8年前のシックな色一辺倒だったときと比べると、今はだいぶ明るくなっていますよね。数年前から少しずつ明るいものが出てきてきましたが、その気分が今季はいよいよ本格化。色使いについてはコンサバな傾向のある日本のブランドでも、明るい色使いが多く見られたように思います。
明るく感じられたのは色使いだけが理由ではありません。今季のキーワードは、ズバリ“トランスパレント”。とにかくクリアカラーが充実していたんです! 繊細な透け感で魅せるフレームが本当に目立っていました。
その透け感の表現のひとつとして挙げられるのが、薄さ&細さ。今回はいくつかのブランドで、「フロントのプラスチック生地を強度を保てるギリギリまで細く(または薄く)しました」という話を聞きました。従来よりも薄く細身でも強度を確保できる高密度アセテートを使ったものをはじめ、設計によって薄いながらも強度をキープしているものなど。メタルフレームをはじめとした“かけ心地と見た目の軽やかさ”がトレンドとなるなかで、プラスチックも繊細な使い方を多く見るようになりました。
同じ生地でも細く薄くなることで、光が透けて明るく軽やかに見えますからね。クリア生地ならなおさらです。それでいてクリア系のカラーは肌を透かすし、ラインが繊細だから発色の良いカラーでも嫌味がない。ここ最近メタルフレームばかりかけていた、という人も繊細なプラスチックなら乗り換えやすく、また新鮮な見た目を楽しむことができると思います。
そして、トランスパレントの表現としてもう一つ挙げられるのが、クリアの生地から裏側の装飾を透かしたデザインです。たとえば、2種類の生地を貼り合わせ、裏側、または表側の生地を削り出すことで透け感を強調したRES/REIの新作。また、メタルの繊細な装飾を薄いクリア生地からのぞかせたBOZの新作。
Tarianの新作でもフロントの裏側にはめ込んだパーツをクリア生地から透かせたものがありましたね。少しアプローチは違うけれど、クリア生地でドット柄を表現したLafontの新作も素敵でした。そんなわけで、今季このトランスパレントはぜひ取り入れてみたいと思っています。
そのほか今季驚いたのは、多角形フレームの充実っぷりです。今季はトラッドなブランドからモード系のブランドまで必ずラインナップされていたといっても大げさではないぐらい、とにかく多角形を目にしました。数年前から増えていたとはいえ、ここまで主流な存在になるとはびっくりです。一見個性的に見えて、じつは意外と顔になじむものも多いので、これまで主流だった丸みのあるフォルムとはまたひと味違ったものを求めている人には、おすすめの選択肢だと言えましょう。今ならバリエーションも多いので、自分に似合うものが見つけやすいと思います。
また、カラーについてはこれまではあまりなかったグリーンをラインナップしているところが増えてきたかな? グレイッシュなカラーも引き続き気になりますね。
以上、まだ展示会の興奮が冷めやらない状態での速報をお届けしました! これからまためがね雑誌でも春の新作を紹介していくので、そちらもぜひご覧いただけたら嬉しいです。
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。