【伊藤美玲のめがねコラム】 第87回「カラーレンズでメイクを楽しむ」
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私が子どもだった頃、祖父母世代のめがねのサイズは大きかったものです。とくに女性は大きなフレームに、ピンクやパープルのグラデーションレンズを入れている人も多く、目元がとっても華やかで。大人になってもそのスタイルへの憧れは消えることなく、私もグレイヘアになったらトライしてみたいなぁ、なんて漠然と思っていました。
ですが今、カラーレンズへの熱が急激に高まっています。というのも、そうしたレンズを“メイク”として提案しているところが増えているからです。
コスメのようにカラーレンズで遊ぶ
最初にレンズとメイクの関係性に気づかせてくれたのは、“コスメを選ぶようにメガネを選び、メイクをするようにメガネを纏う”をコンセプトにした女性のためのアイウェアショップ「GLASSAGE」でした。昨年の春に取材でお話を伺うなかで、「レンズにピンクやオレンジといったカラーを10%ぐらい入れると、メイクがより立体的に見えたりするんですよ」と、教えてくれたんです。
私もこれまで薄い色のカラーレンズでめがねを作ってきましたが、その主たる用途は“眩しさの軽減”でした。それゆえブルーやグリーンで作ることが多く、見た目についても“すっぴん隠し”という感覚でいたので、“カラーレンズでメイクを生かす”という発想に、目からウロコが落ちました。さらにピンク系とオレンジ系のレンズを目元にあてがい、どちらのほうが肌が生き生きと見えるかというアドバイスまでしてくれて。「コスメを選ぶようにメガネを選ぶ」とは、こういうことか! と、新たな気づきを与えてもらったのでした。
メイク効果を謳ったアイテムも登場
そんな折り、前々回のコラムで紹介した「LILY COULURE」(リリクルーレ)が登場。こちらはまさに、「メガネで、メイクする」がコンセプトのアイウェアです。独自技術によりレンズの目元部分のみにカラーが入っているため、掛けるだけでアイシャドウをしたかのような表情を演出できます。
しかもレンズならば、アイシャドウでは不可能な“目の上に色を乗せる”ということが可能になるわけです。そのためか、下の写真を見るとリリクルーレを掛けているほうが目が大きく見えるような気がしませんか? レンズの“メイク効果”を実感することができる、画期的なアイウェアだと言えましょう
そして秋には、JINSから「チークカラーレンズ」が登場。こちらはレンズの下部分にグラデーションの色味を入れることで、チークを施したような視覚効果をもたらすレンズです。めがねをかけるだけで頬の血色感がアップし、顔全体をより明るく見せることができます。
SNSでは、早速購入して自撮りをアップしている人が多数。バズった投稿もいくつかあり、私がお店に行った際にもサンプルを試着している女性の姿が見られました。
こちらは目元部分がクリアなので、自然な視界をキープしたまま頬に彩りを加えられるのが特徴。カラーレンズに慣れていない人もトライしやすく、アイメイクとの相乗効果も得られそうです。発売されたのは昨年の秋だったので、これからますます人気になるのでは? これにより、“レンズでメイクする”という発想が、一気に多くの人に浸透していくのではないかと予想しています。
レンズをポジティブに楽しむ時代に
私がめがねに本格的にハマり出してそろそろ20年ぐらいになりますが、こんなふうに若い世代の女性に向けてカラーレンズが打ち出されるようになったのは、初めてではないでしょうか。まさかレンズに対して「かわいい!」とコメントが付く日が来るなんて、予想もしていませんでした。
レンズは快適な視界を得るために、とても大切なものです。ですが、残念ながらこれまでは、“目が小さく見えてしまう”、“反射が気になる”などの理由で、ともするとめがねを嫌いになってしまう原因ですらありました。そんなレンズが、めがねを掛けるポジティブな動機付けになっていることを私はとても嬉しく思います。
もちろん、こうしたアイテムの登場以前からカラーレンズをメイク代わりに活用しているお店もあったでしょう。でも、こうして商品化されることで、よりレンズの魅力が周知され、トライしやすくなるのはとってもありがたいことなんですよね。というのも、じつは10年ぐらい前、濃度15%ぐらいのピンクのレンズでめがねを作ったら、ほろ酔い状態のような目元になってしまった苦い思い出があり……。ですが、リリクルーレやチークカラーレンズならカラーや濃度もメイク向けに考えられていますし、試着もできるとあって、そうした失敗も少ないはず(度付きの仕上がりは気になるところですが)。
すっぴん隠しとは違う、新しいカラーレンズの楽しみ方。めがねユーザーなら、これはトライしない手はないのでは!? 私もぜひリベンジしてみようと思います。
JINS「チークカラーレンズ」
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。