読む力を音声でサポート「OTON GLASS」
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文字を見て読むことが難しいのであれば、方法を変えてみればいい。
だって私たちの感覚はひとつではないのだもの。
そんな発想で生まれためがねがあります。その名は「OTON GLASS(オトングラス)」。
OTON GLASSは「文字を読む」ことを視覚ではなく、聴覚で補完して行うめがねなのです。
「OTON GLASS」には、視点と同じ位置にカメラがついており、そこで撮影した文字を付属のデバイスが音声に変換して読み上げる機能がついています。目で追っている文字を音声によって認識できるのです。
はじまりは、失読症を患った父(オトン)の力になりたいという思い
開発者は島影圭佑さん。きっかけは、島影さんのお父さんが脳梗塞に倒れ、後遺症で失読症を患ったことでした。
失読症とは、脳梗塞や脳卒中などによって脳内の言語をつかさどる領域が損傷し、文字や文章を正しく認識する能力が損なわれてしまった状態を指します。
今まで通り会話はできても新聞を読むことができない。文字が並んでいることはわかっても何の文字なのか認識できない。島影さんは、そのように当たり前のことができなくなった家族の姿を目の当たりにし、「何とか力になりたい」という思いを抱かれたそうです。 その思いから、当時大学で学んでいた工業製品デザインの知識を活かし、アイディアを練り上げて完成させたのがOTON GLASSでした。
誰もが文字を認識できる社会へ
病気で後天的に文字が読めなくなる失読症とは別に、ディスレクシアと呼ばれる、先天的な読字障害があります。こちらは学習障害のひとつで、文字がにじむ・ぼやける、左右反転して見える、そもそも文字であることを認識できないなど、様々な状態で文字を読むことが困難な状態を指します。「文字を認識する」ということに困難が生じるので外からはわかりにくく、子どもであれば自身でも気づきにくい障害といえるでしょう。
OTON GLASSは、ディスレクシアの人のサポートとしても使うことができます。
1月24日放送のNHK「あさイチ」でも取り上げられ、読むことに悩みを抱える子どもたちの課題解決ツールとしても注目を集めているのです。
また、読みあげ機能は英語と日本語に対応していることから、現地の文字が読めない海外渡航者も使用可能です。OTON GLASSが広まれば、「読む」の周辺にある障害を取り除くことができるでしょう。
島影さんのお父さんはリハビリを経て、すでに失読症から回復したそうですが、必要としている多くの人のために改良が重ねられ、2018年内にはモデルチェンジも予定されているそうです。
「めがね新聞」では、引き続きOTON GLASSを追いかけていきます!
OTON GLASS
書店で働きながら文章を書いています。
「たまごを割らずにオムレツは作れない」をモットーに、色々なジャンルの記事に挑戦していきたいです。
好きなめがねはもちろんオーバル型。