めがね拭き“トレシー”の30年 東レ株式会社 渡邉和樹さんインタビュー
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トレシーというめがね拭きを知っていますか?トレシーは繊維をはじめ様々な事業を手がける東レ株式会社が開発しためがね拭き。2017年で誕生から30周年を迎えます。
めがね拭きとは言っても、トレシーの用途はめがねだけに止まりません。スマホやタブレットの画面、テレビをはじめ様々な用途に使えるというのがトレシーの強み。
今回は東レ株式会社トレシー販売室の渡邉和樹さんにお話をうかがいました。
意外と身近にあるトレシー
通常のめがね拭きやクリーニングクロスといった製品とトレシーはどういった違いがありますか?
渡邉和樹糸から最終製品まで東レ基準で管理している点です。その中でも特徴的な商品として30年前に開発された2ミクロンの糸を使ったトレシーがあります。一般的なものだとだいたい5~10ミクロン前後のものが多いと思います。また、汚れを取り込むミクロポケットも大事な働きをしていて、これがあると拭き取った汚れが再付着しないんです。
糸の細さが半分以下なんですね。
渡邉和樹そうですね。そのおかげで汚れが綺麗に取れるんです。トレシーの超極細繊維は拭き取り面に密着して汚れをキャッチし、繊維の隙間(ミクロポケット)に汚れを次々と取り込んでいきます。この「拭き取って」「取り込む」という一見シンプルな仕組みなんですが、シンプルなだけに違いも出やすいところなんです。
トレシーはどういう用途で使われているんですか?
渡邉和樹店頭販売用やめがねケースに入っているめがね拭きはもちろん、それ以外にもたくさんあります。「お掃除用」や「洗顔の際の泡立て用」といったものから、工業製品を作る際のふき取りや、医療機器の清掃用にも使われています。
最近だとスマホに貼る保護フィルムのキットに同梱されている、画面を拭くクロスなどでもトレシーが採用されています。
めがね拭き以外のバリエーションも豊富なんですね。
渡邉和樹美術館のお土産や、時計のメンテナンス用にもよく使っていただいています。あとは意外なところでグラス磨き。結構シェアもあるんですが、飲食店に行って拭いている姿を見たときにクロスの種類を聞くと、結構トレシーであることが多くて……自分たちでも驚いています。
飲食店のお客様からはどういった評価をいただいていますか?
渡邉和樹「トレシーを使うと他のものは使えない」というありがたいお言葉をいただいています。似たような商品は結構あるんですけど、プロの方が毎日ヘビーユースすると違いが出てくるようで。生地が破れたり、使い込んでほつれちゃうっていうのもほとんどない。長持ちしすぎるので商業的には微妙なんですけどね(笑)。
トレシーの歴史
誕生30周年のトレシーですが、どういった経緯で生まれたんですか?
渡邉和樹繊維研究所というところがありまして、そこで80年ごろに世界一細い糸を作って生地にする試みをしていたんです。
83年くらいにその手法が見つかって、細い糸の生地ができて。最初はそれでブラウスとか衣料品を作ったんですが、あまりにもコシがなかったんですね。細くて薄くて、洋服の生地としては使い勝手が良くないという話になりました。
そんなときに研究者がめがねを拭いたら、汚れが綺麗に取れたんです。そこから「めがね拭き」という発想になりました。
面白い話ですね!そこからめがね拭きとして売り出すことにしたんですか?
渡邉和樹売ろうというまでは、紆余曲折があったようで。当時はめがね拭きを店頭で売るという文化がなかったんですよ。めがね拭きはサービスで差し上げるのが一般的だったんです。
売るものじゃなかったんですね。
渡邉和樹はい。なので、当時のめがね業界に東レの人間がアプローチしてもあまり良い評価はいただけなかったようです。
へー!
渡邉和樹ただ、やはり機能としては素晴らしいもので。当時はめがねのレンズも今みたいにコーティング性能が良くなくて、汚れもつきやすかった。もちろんめがね拭きも別珍とか、マイクロファイバーではなかったんです。
そこで最初は駅のキヨスクのようなところに置いて販売を始め、口コミで広まっていったんです。当時、他社も同じようなタイミングで出てきていたのでうちが1番最初ではなかったかもしれないんですけど、めがね拭きに「トレシー」というブランドを付与し、パッケージなどからブランディングをして消費者に認知してもらえたというのはトレシーが初めてだったのではないでしょうか。
あとは30年前なので、繊維メーカーがファッショントレンドを作っているような部分があったと思うんです。それまでのめがね拭きがあくまで付属品で、単色のものが多かったなか豊富なカラーバリエーションと柄物を出して、「可愛い」「お洒落」というプラスの価値を取り入れたところも大きな変化だったと思います。
売り上げ的にはどういった変化がありますか?
渡邉和樹発売当初はテレビCMなどの媒体露出効果もあって第一次ブームが起こり、垂直的に立ち上がりました。その後、今から十数年前に洗顔ブームが起こり大きく伸びました。現在は第一次、第二次ブームのような大きな伸びはないですが安定した需要で推移しています。
トレシーのこれから
今後の展望として、トレシーをこうしていきたいというようなものはありますか?
渡邉和樹これまで大変お世話になっためがね拭きやめがね業界は引き続きベースとしてやっていきたいです。今は業界もかなり変わっているので、そういった変化にも対応していきつつ。ただ一方で、脱めがね拭きを図りたいというのもあるんです。これ、業界の人に言うと怒られちゃうかもしれないですけど(笑)。
トレシーを紹介するとき、「めがね拭きです」というとその一言でわかってもらえます。ただ “めがね拭き”というイメージがあまりにも強くて、それ以外に広がっていかない。めがね拭き以外にも、スマホ用のクロスもそうですが、日常生活の中で汚れを拭くという行為ってたくさんあるんです。
少し前、テレビがすごい出た時期にはあるメーカーの出荷されるテレビに大判のトレシーをつけてもらったりしました。最近ですとカーナビなども画面が大きくて、これにもトレシーは使えますし。そういった拭くシーン、トレンドに合わせてアプローチしていきたいです。
めがね拭きをベースにしながら、めがね拭きではないところでも商品の良さを認知してもらえたらいいなと。「めがね拭き」から「ワイピングクロス(拭くもの)」として転換していきたいですね。
転換期なんですね。
渡邉和樹そうです。なので今回、ロゴもリニューアルして。
どう変わったんですか?
渡邉和樹旧ロゴはもともと眼をイメージして作られたんです。めがね拭きのニーズがないときに、めがね拭きのトレシー、眼のロゴを含めて普及させたいというところからスタートして。
ただ30年経って、めがね拭き以外のところにも広めていくにあたり、「汚れが取れて洗えるトレシー」という、トレシー自体のイメージを変えていくためにロゴを刷新したんです。
この30年を機にもう一度リスタートしたいなと。そういう想いが込められています。
ありがとうございました!
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