早期発見・治療が重要!「子どもの弱視」について
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赤ちゃんを見ていると、気づけばいつの間にかできるようになっていた!…ということの連続ですよね。
例えば、歩くこと。寝返りして、ズリバイして、ハイハイして、つかまり立ちができるようになって…何度も転んで危なっかしい歩き方をしていたのに、いつの間にかひとりで歩けるようになっている! そんな段階を誰もがたどって成長してきたはずです。大きくなった今となっては当たり前のことも、幼い頃に少しずつ経験を重ねてきた結果としてあることなのでしょう。
視力も同様で、生まれた頃からはっきりと見える訳ではありません。外部から視覚刺激を受けることで、少しずつ発達していくものなのです。つまり、視覚刺激が的確にまたは充分に与えられないと、視力が育たないということが起こります。そのことにより、視覚情報が伝わる経路のどこかに支障があることを「弱視」と呼びます。
弱視
弱視は、この視覚情報が伝わる経路のどこかに支障があるときに生じます。この原因は通常、視力の発達の感受性期に片目または両目に適切な視覚刺激を受け取ることができなかったために視力の発達が止まったり遅れたりすることによります。例えば、後述するように弱視は、生まれたときから3歳くらいまでの間に、片方の目のまぶたがさがったままだったり、黒目の中心の部分が濁っていたり、片方の目の位置がずれていたり、きちんと網膜にピントが合わない場合に起こります。
弱視は、医学的弱視と社会的弱視に分けられます。
*医学的弱視:視力の発達の感受性期に適切な刺激を受け取ることができなかったために生じた弱視で、眼鏡をかけたり訓練をしたりすることで視力が良くなる可能性があります。
*社会的弱視:あらゆる種類の目の病気によって生じた回復困難な視力障害のことをいい、盲や弱視を含めてロービジョンともいわれます。
(日本眼科学会ホームページより引用)
日本眼科学会ホームページ>目の病気>その他>弱視
弱視は、8歳頃までに発見できなければ、その後の改善が難しくなります。しかし本人にとっては、自身の視界=はっきり見えない状態が当たり前であるため、自らそのことに気づくことは難しいでしょう。また、周りの大人も意識して注意しない限り、気づくことがなかなか難しいのが現状です。
子どもの弱視は感受性期(※詳細は後述)に治療を施すことが重要です。早期発見が重要にも関わらず、見落とされがちな子どもの弱視について、めがね新聞では詳しくお伝えしていきます。一体どんな症状なのか、どうすれば早期発見ができるのか、一体いつまでに発見すれば治療できるのか、めがねの選び方のポイントなどを連載でお届けします。
物を「見る力」の成長過程
私たちの目は、生まれたときから今のように見えているわけではありません。赤ちゃんの頃は明るさを認識するのみで、生後1カ月で物の形、2か月ほどで色がわかるようになり、生後4カ月頃には動くものを目で追えるようになります。
そして3歳頃には視力が1.0になり、8歳頃までには大人と同様の視覚機能がほぼ完成します。視力は、ものを見ることで脳が刺激され、徐々に発達していく感覚なのです。この時期を視力発達の※感受性期といいます。
感受性期に十分な視覚刺激を受けないと、視覚機能が十分に発達せず、ものを見てもピンボケのように焦点が合いません。これが弱視と呼ばれる症状です。
子どもの弱視は、わかりにくい
弱視は、下記の通り原因ごとに4種類に分けられます。
①形態覚遮断弱視
生まれたときからまぶたが下がっている(眼(がん)瞼(けん)下垂(かすい))、黒目の部分が濁っている(角膜混濁、白内障)などの病気のため、目に十分な刺激が与えられなかったことにより生じます。
②斜視弱視
ものを見ようと視線を向けたとき、片方の目が違う方向を向いている状態を斜視といいます。片目の視線がずれていると、その目は使われないため視力が発達せず、弱視となってしまうのです。
③屈折異常弱視
強い遠視や乱視などの屈折異常がある場合、ピントが合わず目が十分な刺激を受けないために弱視が生じます。
④不同視弱視
右目と左目で屈折異常の程度が大きいと、よく見える方の目ばかりが使われるため、見えない目の視力が発達せず弱視となってしまいます。
弱視の子どもは、見えにくい状態が当たり前になっているので自ら症状を訴えることはありません。①と②の場合はまぶたの状態や目の向きなどから比較的発見しやすいですが、③と④の場合、外からはっきりと分かる特徴がないため日常を共にしている家族でさえも見落としがちです。
弱視が発見されにくい? 3歳児健康診査の実状
弱視発見の機会として、3歳児健康診査で受ける視力検査があげられます。市区町村は3歳になる子どもには健診をするよう義務付けられているので、誰でも受けられる検査です。
一次検査として、まず各家庭に視力検査キットを送付して検査をしてもらいます。子どもが嫌がるなどして家庭で実施できなかった場合は、健診会場で二次検査をするのが一般的です。検査にはランドルト環という輪の一カ所が切れた指標などが使われますが、子どもが返答する形式の検査のため、弱視が見落とされがちであると言われています。
そこで開発されたのが、両眼開放オートレフケラトメーターと呼ばれる測定機器です。従来のものと比べてより正確性が高まり、子どもの弱視の早期発見に役立つとされています。しかしながら、高価格な機器であるため、現在3歳児健診に導入しているのは全国1741ある市区町村のうち20にも満たないそうです。
弱視は、視機能が完成する8歳頃までに発見できなければ、その後の改善は難しくなります。しかし、自治体の健診では、より正確な検査を実施しているところは少ないのが現状です。「健診で見つからなかったから大丈夫」と安心せず、周囲にいる大人が日頃から子どもの行動を注意深く観察することが必要だと言えます。
では「日常のどんな様子に気を付ければ早期発見できるのか」について、次回、お子さんの弱視を発見する方法について紹介していきます。
書店で働きながら文章を書いています。
「たまごを割らずにオムレツは作れない」をモットーに、色々なジャンルの記事に挑戦していきたいです。
好きなめがねはもちろんオーバル型。