【伊藤美玲のめがねコラム】第56 回「スーツとめがね」
このコラムの更新日は4月1日。今日から新社会人という方もいらっしゃるかもしれませんね。いやはや、おめでとうございます。
また、新年度になり部署が異動になったという方もいるでしょう。私は保険会社で数年働いていたのですが、新年度といえば自分が部署を異動になったり、直属の上司が変わったり、新年度の挨拶があったりなど、なんだか気持ちが引き締まったものです。
ちなみに私がライターとして独立したのも、4月1日。この日を選んだのは、フリーになっても、この日を区切りにしたかったから、というのも理由のひとつです。(おかげさまで、独立して14年目を迎えました)
と、冒頭から4月1日を連呼していますが、それには理由があって、自分が新卒で入社した4月1日に、めがねに関してとても印象に残っている出来事があるからなんです。
同期の総合職に、黒ぶちめがねをかけていた男性がいました。彼は同じ本社勤務ということで部署は違えど時々話す機会があったのですが、なんと4月1日の入社早々上司から「黒ぶちめがねはこの業種にそぐわない」と、めがねを買い替えるようお達しがあったというんです。
彼がかけていたのは、至ってシンプルなプラスチックの横長スクエアだったんですけどね。保険業界とはいえシャツは柄モノもOKという、当時にしては自由な気風のある会社だったのですが、それでもNGだったというわけです。
さすがに今はプラスチックフレームというだけで買い替えを命じられることはないと思うけれど、とはいえビジネスシーンにおいてある程度のTPOは必要であると私は思います。あ、もちろん服装が自由ならめがねも自由でいいですよ。あえてのハズしもキマっていれば、とっても素敵。ただ、スーツの場合ならスニーカーより革靴のほうがしっくりくるよう、めがねにもスーツに合うものがあるわけで。シーンに合うものだったり、全体のバランスが取れていたりしたほうが、ベターなのではないかと思うのです。
では、スーツにはどんなめがねが似合うのか? その雰囲気を掴むためにも、スーツのときにかけるめがねは、実際にスーツを着て選びに行くことをお勧めします。髪型もオンとオフで変えているのなら、お仕事用のスタイリングでね。それなら試着をしたときに雰囲気が掴みやすいので失敗も少ないし、お店のスタッフもアドバイスがしやすいので、スムーズにお見立てしてもらえるでしょう。
このコラムでも何度か触れていますが、同じめがねでも、服や髪型を変えただけで似合ったり似合わなくなったりするもの。それゆえスーツに限らず「そのめがねをかけるときの服装(またはそれに雰囲気が近い服装)でお店に行く」というのは、案外重要なのです。
休みの日までスーツ用のめがねをかけたくないって人は、ぜひ休日カジュアル用のめがねとの2本持ちがオススメ。スタイリングの幅が広がるし、かけかえることで気持ちも切り替わる。それに2個持ちのほうがそれぞれが長持ちしやすいし、どちらかが壊れてしまったときにも安心です。
いやぁ、このコラムを書きながら、入社当時のことをいろいろ思い出してしまいました。ところで、当時私はどんなめがねをかけていたのかといえば、それはシルバーメタルのハーフリム。小心者の私は、何となくプラスチックでは注意されるかもという意識があったのかもしれません。ささやかな抵抗で、形は多角形でしたけどね(笑)。それにしてもメタルの多角形って、なんだか今のトレンドっぽいかも。 久々に、引っ張り出してみようかしら……!?。
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。