【伊藤美玲のめがねコラム】第9回 私が展示会へ行く理由
前回のコラムでも書いたように、3月半ばは春の展示会シーズン第1弾でした。
いやぁ、毎回思うけれど、やっぱり展示会は楽しい。
楽しいと思う理由には、いろいろありまして。
まずひとつには、新作がいち早く見 られるってこと。これはめがね好きとしてはとても幸せなことです。好きなブランドの新作はもちろん気になるけれど、取材となればブランドの好みは関係ありません。とにかく、一つひとつでも多くのブランドを見られるように各ブースを行ったり来たり。そうやってたくさん新作を見ていくうちに、フレームのサイズ感や色使いなど、なんとなくそのシーズンの傾向が見えてきたりします。
新素材やこれまでにない構造を採用するといった新しい試みには、特に興味津々。その開発秘話などを直接デザイナーさんから聞くことができると、「1本のめがねに、こんなストーリーがあったなんて!」と、感動することがしばしばあります。
そう、展示会ってめがねの仕事に携わる人たちに直接会って、話ができるのが醍醐味なんですよね。鯖江をはじめ、東京以外を拠点にしているブランド、メーカー、工場の人たちが一堂に会するわけですから、それだけでもうワクワクしてしまいます。
初めて展示会へ行ったときは「好きなブランドのデザイナーさんに会える!」なんていうミーハーな気持ちもあったけれど、取材をしていくほどに、つくり手と会って話して、人柄に触れるというのは、そのブランドを深く知るうえで大事だなぁと思うようになりました。
「今季のコンセプトにはこんな思い を込めている」「今作では、このパーツのつくりにどうしてもこだわりたかった」といった具体的な話を聞くと、よりそのブランドの世界観を知ることができます。それは直接的な話だけでなく、会場の雰囲気やディスプレイから伝わってくることも。
海外ブランドについては、来日してくれるデザイナーさんもいるけれど、その多くは海外の展示会まで行かないと会うことはできません。だから、お金も時間もかかるけれど海外まで行く価値があると思うのです。
デザイナーさんと直接話すことができなかったとしても、行くだけで感じとれることはたくさん。ブースの雰囲気やスタッフの着こなし、めがねのかけこなし。そして対応、サーブされるフードやドリンクなどなど……。そのすべてから、ブランドの“らしさ”を感じることができます。
パリで行われている展示会Silmoへ初めて行ったときは、ほとんど取材らしいことはできなかったけれど、その場に行って各ブランドのブースを見られただけでも大きな刺激を受けたものです(もちろん仕入れに行く場合は、それだけではダメだけれど)。
国内海外問わず、きっと私はプレスリリースやフレームからだけでは感じ取れない「何か」を得たくて、そしてそれを少しでも言葉で伝えたくて、取材を続けているのかもしれません。
ブランドの世界観やめがね業界の素敵な部分を、少しでも雑誌やこのコラムを通してユーザーの方々に届け、より多くの人にめがねに興味を持ってもらうことができればと思っています。
そうそう、東京の展示会では買い付けにくる全国のめがね屋さんにお会いできるのも、嬉しいことのひとつ。このコラム読んで頂いている皆さま、私を見つけたら是非声をかけてくださいね!
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。