レンズってどうやって選べばいいの?③ 〜老視(老眼)編〜

めがねは毎日身につけるものだから、フレームだけでなくレンズも自分に合ったものを選びたいですよね。けれども、レンズの構造は一度聞いただけではよく理解できず、結局値段だけで判断しがちです……。

「めがね新聞」では、レンズ選びに活かせる「レンズの知識」を、ニコンメガネ加藤さんご協力のもと連載していきます! レンズは目の状態によって適したタイプが変わってくるため、まずは自分の目の状態を理解することが必要です。これから、それぞれの目の状態に分けて、ひとつずつ詳しくレンズ選びのポイントを紹介します。

今回は「老視(老眼)」補正のためのレンズ選びについてお届けします。

老視って何?

突然ですが、人差し指の指紋を見てください。
目のいい人は裸眼で、近視の人はめがねをかけたりコンタクトをつけたりして、遠くがよく見える状態で見てください。そして、人差し指を徐々に目に近づけてください。すると、ピントが合わなくなり、指紋がぼやけるポイントに気づきますでしょうか。そのぎりぎり手前のピントが合うポイントに指を置いてください。この目と指の間の距離を「近点」と呼びます。この距離が、あなたにとってピントを合わせることができる一番近い距離になります。

では、あなたの近点について2つのポイントから確認してみましょう。

point-1:この「近点」に指を置いてみつめ続けると目が疲れませんか?

近点にある指を3分以上見続けられるでしょうか。目に力が入って、負担がかかっているように感じませんか。なぜなら、人は「目から近い距離にピントを合わせるとき」に目の中の筋肉を使うからです。このとき、目の中の筋肉(ピント調節筋)が最大限働いている状態になります。

このように近くにピントを合わせることを、専門用語で目の「調節」と呼びます。

point-2:あなたの「近点」は何センチメートルですか?

30cm? 40cm?人によって近点は異なりますが、実はこの近点、あなたが遠視でなければ、子どもの頃は10cm以内だったはずなのです。つまり、近点は子どもの頃から年々遠くなり続けています。これは「ピント合わせをする能力」が年々弱くなることに起因します。

これを専門用語で目の「調節力」と呼びます。「調節力」は子どもの頃から落ち続けていく能力なのです。

近点が30cmを超えてくると、生活に様々な支障が出始めます。それは、読書がつらい、パソコンがつらい、スマホがつらいなど、近くを見続けることの妨げになります。つらいだけであれば、まだよいのですが、この支障が仕事での大きなミスにつながってくる可能性があるのです。例えば、メールに変換ミスが増える、数字を読み間違える・打ち間違える、またはパソコンやスマホで新しい機能を使いこなす忍耐がなくなる…心当たりがある人もいるのではないでしょうか。生活においても、歯磨きチェックが甘かったり、自分が思っている以上に雑な化粧になったり、洗ったはずの食器汚れが落ちていなかったり…。

それでも我慢して、いよいよ「どうにもならない!」と思ったときに、多くの人が「自分は老眼だ」と自覚するのではないでしょうか。「老眼」という現象は、「調節力の低下」を「自覚するプロセス」といえます。

では、この老眼の「自覚プロセス」を細かく追ってみましょう。

老眼の自覚プロセス①「20代からもう!?【疲れ】の時期」

20代でも30代でも「調節力の低下」は進行しています。スマホの登場で「近く」を見る時間が飛躍的に伸びた現代人。その目は酷使されているため、目の中にあるピント調節筋はずっと使われている状態になりがちです。「目がこる」という言葉があたりまえに使われるほど、眼精疲労はもはや多くの人生活習慣病のようになっています。

目薬をさしても効果は一時的に感じてしまう…。こんなときには、ピント調節筋の負担を減らす機能があるレンズがおすすめです。一般的には「サポートレンズ」や「スマホ用レンズ」と呼ばれるレンズになります。このようなタイプのレンズには、あらかじめ調節力をサポートする度数が入っているので、ピント調節筋への負担をダイレクトに減らす効果が期待できます。

老眼の自覚プロセス②「なぜか我慢…【不便】の時期」

40代を過ぎると「手元にピントが合わない」状態を徐々に自覚するようになります。でも、こう思っていませんか?「まだ我慢できる」「まだ見える」…そうかもしれません。しかし我慢したところで、調節力の低下は止まりません。早いうちにまずは1本、「遠近両用レンズ」を使ってみることをおすすめします。

外出先の電車内などの狭い空間でも楽にスマホをチェックできるようになり、仕事面でも生活面でもスムーズに行動できます。また、近くを見る度に老眼鏡をかけたり、近視の人であればめがねを上にあげたりしていると、その仕草で老眼であることが他からわかってしまいます。やはり、この老眼特有の行為は、その人の「老い」を無意識に感じさせてしまうものです。しかし遠近両用レンズであれば、老眼特有のこの仕草が減り、周囲からの印象も前と変わることはありません。

老眼の自覚プロセス③「はっきりと自覚!…【めがね】の時期」

50代を過ぎるとはっきりと老眼を自覚するようになります。
ここで初めて遠近両用めがねをかけたいと思い始める人も多いのですが、老眼の進行に合わせて「手元を見るための度数」も変化しています。手元を見るための度数が進行していることが原因となり、このタイミングで遠近両用めがねを初めてかける場合、レンズに慣れにくい可能性があります。そのため、中には遠近両用レンズの使用をあきらめてしまう人もいます。

手元用の度数がそれほど強くない40代のうちに遠近両用レンズをかけていれば、手元用の度数があがっても慣れやすいといえるでしょう。遠近両用レンズを使えるか使えないかで、その後の生活の質が大きく変わるため、できれば「不便の時期」からの使用をおすすめしています。しかし、遠近両用めがねになかなか慣れない場合でも、「やや弱い老眼用度数」で遠近両用レンズを試すという方法があります。これなら充分にそのレンズに慣れた時点、だいたい半年ほどでしょうか、で自分に合った度数に変えていけばいいわけです。

また「中近」と呼ばれるレンズもおすすめの方法です。(この「中近」というレンズについては別の機会にお話ししたいと思います。)

50歳を過ぎても、めがねの「かけ外しなし」で、コンサートや映画館のチケットの座席番号が確認できる、レストランでメニューが読める、傘をさしていてもスマホの画面が見える、ホテルのチェックインの際にサインができる、買い物でレシートの細かい文字が読める…こんなあたりまえの生活があたりまえにできるように、遠近両用めがねを是非一度お試ししてみてください。

次回は、「レンズってどうやって選べばいいの?〜遠視編〜」をお届けします!

監修:加藤宏太郎

1987年に日本光学工業株式会社(現・株式会社ニコン)に入社。以来長年に渡りめがねレンズの仕事に携わり、研究開発、生産技術、海外マーケティング、国内マーケティング、国内営業を歴任し、現在、丸の内にあるめがね店「ニコンメガネ」の取締役社長とレンズメーカー株式会社ニコン・エシロールの教育本部長を兼任している。

ニコンメガネ

住所:東京都東京都千代田区丸の内2-5-2(三菱ビル1階)
営業時間:10:30〜19:00(日曜・祝日は休業)
http://www.nikon-lenswear.jp/shop/nikonmegane/index.htm