【めがねと映画と舞台と】第1回 映画『キングスマン』

はじめまして。「めがね新聞」に参加することになった八巻綾と申します。
経歴は別途プロフィールを見て頂くとして、私は子どもの頃から映画とミュージカルにどっぷりつかりながら生きてきました。映画や舞台には様々な楽しみ方がありますが、私は完全に「頭」で鑑賞するタイプ。散りばめられたメタファー(隠喩表現)などに注目しながら、作品の構造を意識して、つたないながらも解釈を試みます。

そんな私の鑑賞ルールにおいて、「めがね」はキーアイテムのひとつ。
映画やミュージカルなどのエンタメ作品において、「めがね」は重要な役割を果たすことがあります。内向的/お調子者といったキャラクターの性格を表したり、変装アイテムとして登場したり。
いろいろな作品に出てくる「めがね」の意味は? 役割は? 1回につきひとつの作品を取り上げて、詳しく見ていこうと思います。

映画『キングスマン』

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

記念すべき第1回で取り上げるのは、イニシエーション(ある社会的集団に成員として認められること)の象徴としての「めがね」です。

題材となる作品は、『キングスマン』(2015年 イギリス)。
ロンドンの高級テーラーと見せかけながら、実は世界最強のスパイ組織の拠点である“キングスマン”。その候補生となった青年が、先輩スパイに指導されながら巨大な陰謀に挑むというストーリーです。
見ごたえ抜群のアクションシーンや、過激かつ下品なユーモア満載の『キングスマン』ですが、その最大の魅力は、ファッショナブルでスタイリッシュな世界観でしょう。中でも、「めがね」はハッキリとした意味づけを持ったアイテムとして登場します。

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

スパイ見習いとなった主人公エグジーは、ストリートファッションに身を包んでいます。対して、彼をスカウトした凄腕の先輩スパイであるハリーは、頭のてっぺんから足の先まで、一分の隙もない完璧な英国紳士の出で立ち。ハリーはエグジーに言います。

“Manners Maketh Man.” (マナーが人間をつくる)

労働者階級出身で学歴もないエグジーを勇気づける言葉であり、終始不謹慎な『キングスマン』の中で唯一ともいえる名言です。階級や人種などの「持って生まれたもの」ではなく、「どう振る舞うか」「どう見せるか」で人間の価値が決まる。ハリーからエグジーへの最初で最後のプレゼントは、きちんと採寸した「オーダースーツ」でした。

         

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

『キングスマン』において、ファッションは何よりも重要な記号。キングスマンのメンバーは「高級スーツ」に身を包み、敵役であるヴァレンタインは品の良い「ヒップホップスタイル」で対峙します。そして、その両者に共通するのが、ズバリ「めがね」。

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

         

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

『キングスマン』では、一人前の人間は全員めがね着用、若い者や半人前の者はノーめがね、とハッキリ分けられているのです。キングスマンのメンバー10人のうち、冒頭で返り討ちにあって殺されたランスロット以外は全員めがねをつけていますし、候補生指導教官のマーリンもめがねをかけています。対して、キングスマンメンバー候補者でめがねをかけている者はいません。

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

クラシックな黒縁めがねのハリーと、ポップなクリアフレームめがねのヴァレンタインが対峙するシーンは、「イギリス対アメリカ」の構図が際立つとともに、両者とも実力十分かつ対等であるということを示し、何とも言えない緊張感が漂います。

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

主人公であるエグジーがめがねをつけるのは、クライマックス直前になってから。とあるアクシデントからスパイとして独り立ちしなければならなくなったエグジーは、満を持してめがねを着用します。エグジーがめがねをかけた瞬間、観客は彼が一人前のスパイとして自分の足で踏み出したことを悟るのです。めがねをつけ、スーツを着込んだエグジーはそれまでの様子が嘘のように、自信満々に難局を乗り越えていきます。半人前だった青年が見事に成長し、立派なキングスマンメンバーになったことを象徴するアイテム。それが「めがね」なのです。

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

このように英国紳士ファッションを全面的に押し出し、「めがね」をイニシエーションの象徴として活用した『キングスマン』ですが、続編となる『キングスマン:ザ・ゴールデン・サークル(原題)』が2017年10月に全米公開となることが決まっています。先日発表された予告編映像に登場するエグジーは、もちろんしっかりめがね着用。【めがね=一人前】の法則は続編でも引き継がれているようです。日本での公開日は不明ですが、是非とも「めがね」に注目して楽しんでみてください。

© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.

映画『キングスマン』予告編

映画『キングスマン』

発売中 Blu-ray ¥1,800(税抜)
発売元:KADOKAWA/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
映画『キングスマン』ブルーレイ&DVD 情報