【めがねと映画と舞台と】第25回『インクレディブル・ファミリー』
我が家には小学校1年生の息子がいます。必然的に、夏休みに観る映画はファミリー向けとヒーローものに偏りがち。ちなみに、2歳くらいの頃から映画館に慣れさせてきたので、まんまと映画館が大好きな子供に育っています。今年も何本か一緒に鑑賞しましたが、ダントツで面白かったのがディズニー/ピクサーの最新作『インクレディブル・ファミリー』でした。
主人公は、伝説のヒーロー”Mr.インクレディブル”ことボブ、”イラスティガール”ことヘレン、そして3人の子供たちから成るパー一家。彼らは物語の冒頭で起こる騒動の責任を問われ、ヒーローとしての能力を隠して生活することを余儀なくされてしまいます。しかし、落ち込む彼らの元に、大手通信会社の社長・ウィンストンとその妹・イヴリンから思ってもみない申し出が!ウィンストンたちは、ヒーローの価値を世間に知ってもらいたいと熱望しており、パー一家の母親ヘレンに白羽の矢を立てます。ヘレンが出張先で大活躍して世間を驚かせている間、留守を任された父親ボブは3人の子供の世話と慣れない家事にてんてこ舞い。思春期の娘の悩みを悪化させ、小学生の息子の宿題も満足もみることができず、活躍するヘレンに嫉妬し鬱々とするボブ。さらには、末っ子のジャック・ジャックが想定外のスーパーパワーの保有者であることが判明して、まったく眠れない日々を過ごすことに。友人たちや子供たちの助けを借りて、なんとか気力と体力を取り戻したボブでしたが、一家には危機が迫っていました。恐ろしい罠がヘレンを待っていたのです……。
前作『Mr.インクレディブル』から14年の時を経て公開された『インクレディブル・ファミリー』。1秒たりとも飽きさせないアクション大作でありながら、仕事と家事/育児の両立の問題や、夫婦の関係、子供の可能性、女性と社会など、多くの現代的なテーマを感じさせるところは、”さすが”の一言に尽きます。特に、ヘレンと同じ妻/母親である私にとっては、大きく頷きたくなるセリフが満載。ヘレンをはじめとして、女性キャラがサポートとしてではなく、メインでストーリーを引っ張る役割を担っていたのも感動的でした。
さて、話題を『インクレディブル・ファミリー』に出てくる”めがね”に移しましょう。本作には、スクリーンスレイヴァーという強力な敵が登場します。テレビやモニターを乗っ取り、画面を見た人々を洗脳してしまうという恐ろしい技術を持っており、幾度となくヘレンを翻弄します。詳細はネタバレになってしまうので避けますが、スクリーンスレイヴァーが1人の人間を洗脳したいときに使うアイテムとして使うのが、めがねなのです。
フォルムはめがねというよりゴーグルに近いのですが、スクリーンスレイヴァーの”洗脳めがね”を装着させられた者は、スクリーンスレイヴァーの意のままに操られてしまいます。思えば、アニメーション作品には、しばしば”洗脳される”という描写や、身近なキャラの中身が誰かに乗っとられるという描写が出てきます。多くの場合、そういったシチュエーションで【人が変わった】ことを示すのは、目です。特に、瞳の色が変化するという表現が多く、私の息子は小さい頃から「目の色が変わる」という展開に怯えていました(『ズートピア』など)。ただ目の色を変えるというだけで、未就学児にも「何かが変わった」という印象を強く与えることができる。目というものが、意志や内面を表すのにどれほど大きな役割を担っているのかが分かります。『インクレディブル・ファミリー』における【視覚を奪われる】→【洗脳される】というロジックについても、息子はすんなりと理解できたようです。
そういえば、パー一家がヒーローとして活動するときに身に着けるマスクも、一見するとめがねのようにも見えますね。こちらはおそらく変装用。ヒーローとしての姿と、普段の姿を分けるためのアイテムです。『インクレディブル・ファミリー』では、このヒーローマスクのON/OFFを巡っても、ひと悶着あります。思春期真っ盛りの長女・ヴァイオレットにまつわる可愛らしくも深刻なエピソードなのですが、ティーンエイジャーのときに片思いをしたことがある人ならば、きっと共感するはず。様々なポイントから楽しめる『インクレディブル・ファミリー』は必見です!
映画『インクレディブル・ファミリー』
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『インクレディブル・ファミリー』公式サイト