【伊藤美玲のめがねコラム】第46回「積極的選択としてのツーポイント」
怒涛の展示会ウィークが終わりました。 今回、主な展示会は10月22日の月曜日からスタート。なかには金曜日までやっている会場もあったりで、私は木曜日を除いて4日間展示会取材をしていたことに。いやはや、さすがに足が棒になりました(笑)。
毎回展示会後のコラムでは気になったトピックについて書いていますが、今季はといえば、とりわけ自分のなかで印象的だったのがツーポイントです。昨年あたりからじわじわと出てきてはいましたが、今季はまさに百花繚乱。ブランドにより打ち出し方も異なり、様々なタイプのツーポイントを見かけるようになりました。
ここで念のため説明しておくと、ツーポイントとは一般的に「フチなしフレーム」と言われているタイプのこと。片眼のレンズに2か所穴を開け、フレームのパーツに留めているものが多いため、この名がついています。(同じフチなしでもワンポイントの場合もあります)
私が初めてツーポイントに出会ったのは高校生の頃。その時はお店の人に「ツーポイントなら、めがねが目立たなくていいですよ」と勧められたのを覚えています。それゆえ、私のなかでツーポイントというのは、めがねが苦手な人がかけるものという印象に。“消極的選択”でしかありませんでした。
しかーし! 今年はむしろ積極的に選びたくなるツーポイントフレームがたくさん登場しているのです。
現在多く見られるツーポイントは、繊細でクラシカルなデザインが主流。リムがないゆえにブリッジやテンプルの彫金模様などが際立ち、その佇まいはまるでアクセサリーのよう。光を受けて輝くレンズも、装飾の一部のように感じられます。消極的選択どころか、伊達めがねとしてかけたくなるぐらい。いやはや、まさかツーポイントに対してそんなふうに思う日が来るとは、自分でもびっくりです。
こうして私がツーポイントをすんなり受け入れられるようになったのには、これまでの日本においてのめがねトレンドの流れが関係しているかと思います。
10年ほど前は、黒縁のウェリントンなど太めのプラスチックフレームがトレンドに。それ以降はクラシックフレームがトレンドの中心となりました。それからレンズシェイプの主流はウェリントンからボストンとなり、次第にラインは細くサイズは小振り傾向に。さらに繊細さや上品さを求めコンビネーションフレームが増え、現在はメタルフレーム全盛に。と、少しずつ繊細さを求めていく流れのなかで、その極みともいえるツーポイントが登場してきたわけです(とてもざっくりした説明ですが)。
こうして段階を追って繊細になっていったので、ツーポイントをアクセサリー感覚で身に着けることを自然に受け入れられるのではないか、と。メタルの繊細な表現が年々高度に、そしてこなれてきていることも要因かもしれません。
この春に発表されたYELLOWS PLUSや、GERNOT LINDNER(写真)のツーポイント。そして秋に登場した10eyevanのツーポイントは、まさに目元をエレガントに演出したいときにかけたくなるツーポイントです。
また、上記とアプローチは異なりますが、もともと繊細で超軽量なツーポイントを得意としていたLINDBERGやSilhouetteといったヨーロッパブランドも、近年ファッション的なアプローチの強いモデルを出してきている。というのも、ツーポイントに注目してしまう理由かもしれません。
その他、まだまだオススメしたいツーポイントもあるのですが……。 これから少しずつ店頭にも増えていくと思われるので、ぜひチェックしてみてください。
ちなみに私が今季の展示会でオーダーしたのも、ツーポイントの大振りなサングラス。繊細かつ大胆なデザインをどうかけこなそうか。いろいろ楽しみながら考えてみようと思っています。
GERNOT LINDNER(ゲルノット・リンドナー)
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グローブスペックス エージェント
03-5459-8326
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。