【伊藤美玲のめがねコラム】 第113回「“接客時のサングラス着用” 自由化したZoffに話を聞いてみた」
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さて、今年も本格的なサングラスシーズンがやってきました。
……と言いながらも、このコラムは年間通してサングラスの話題が多めですね。その理由は、ここでも何度か触れているように、多くの人にとってサングラスがもっと身近なアイテムになってほしいと思っているからです。
まだまだサングラスが敬遠されてしまう場面もありますが、ここ数年でサングラスを掛けている人はだいぶ増えたような気がしています。ファッションアイテムとして取り入れている人、紫外線防止という美容の観点から掛けるようになった人。さらに最近では、安全運転のため運転士用に保護めがねを導入したという公共交通機関の話題も増えました。
これは私にとって、とても喜ばしいことです。やっぱり掛ける人が増えるほど、サングラスに対する抵抗感はなくなっていくと思うから。眩しいと感じる人が、躊躇なくサングラスを掛けられる世の中になってほしい。私はそう願っています。
接客時のサングラスを自由化する動きも
こうしてサングラスが身近な存在になった理由のひとつとして、大手めがねショップによるPRの効果が挙げられると思っています。この時季になると店頭の目立つところでサングラスを展開していますし、調光レンズや偏光レンズといった機能レンズの知名度がぐっと上がったのも、店頭でのわかりやすい打ち出しによるところが大きいのではないでしょうか。
そうしたなか、Zoffでは昨年4月に従業員のサングラス着用を自由化しています。そのプレスリリースを目にしたとき、私は正直驚きました。だって、まだまだ社会的にはサングラスに対して抵抗感があると言われるなかで、それを掛けて接客することをOKとするわけですから。
でも、よく考えたらそこで驚いてしまう私の考えこそ古いわけで。まずは販売する側から接客時に着用することを是とし、実際にその魅力を伝えていくのはとても大事なことですよね。
この取り組みから約1年。従業員やお客様の反応はどうだったのか。Zoffの広報を担当する鈴木晴子さんに話を訊いてみました。
サングラス着用自由化が
もたらしたメリットとは?
Zoffでは完成品のサングラスの他に、約1600種類のフレームに、オリジナルのレンズカラーである「Zoff COLORS」 28色を自由自在に組み合わせてサングラスを作ることが出来ます。現在Zoffでは、そうしたカスタムサングラスのPRに力を入れていますが、それはなぜなのでしょうか。
鈴木弊社では、強い日差しから目を守り、ユーザーの方に日常的にサングラスを楽しんでほしいという思いがあります。その一方で、サングラスを購入するのはアパレルショップや雑貨店である方が多く、Zoffが眼鏡店であることは浸透していても、“サングラス=Zoff”というイメージは定着していないという現状がありました
なるほど。めがねフレームとして販売されているモデルでも、好みのカラーレンズを入れて自分だけのサングラスを作ることができる。これって、めがね好きなら知っていることですが、案外まだ一般的には知られていないんですよね。もちろん、調光レンズや偏光レンズを選ぶこともできます。
では、そうしたなかで従業員のサングラス着用を自由化した理由とは?
鈴木サングラスをもっと身近に感じてもらいたい、サングラスといえばZoffというイメージを持っていただけたら、という思いから自由化に踏み切りました。もちろん、欧米に比べて日本ではまだサングラスが浸透していませんし、社会的にもサングラスに対する抵抗感というのが一定数ありますよね。ですが、自由化にすることでそれを払拭したいという思いもあったんです
サングラスへの抵抗感を払拭するためにも、まずは従業員自らが掛けて接客をする。眼鏡店側から変わらないと、世の中は変わっていかないということですね。たしかにその通りですが、それを実践するとなると、やはり会社としても、従業員としても勇気がいること。大手であればなおさらです。実際に従業員側の反応はどうだったのでしょうか。
鈴木スタッフ自身がサングラスをかけながら接客するので、お客様にカラーレンズを提案しやすくなったという意見があがっています。また、サングラス自由化の後に制服の変更があり、さらにスタイリングを楽しめるようになったという声もありました
とのこと。では、気になるお客様の反応については?
鈴木以前だと“サングラス=ガラが悪い”、“印象が暗く見える”というイメージをとくに年配の方が持たれるイメージがありましたが、店頭でヒアリングをしたところ『スタッフのサービスが良いので気にならなかった』、『社会的に制服や髪型などいろいろなものが自由化されているので、サングラスが自由になっても良いと思う』などといった声をいただいています
と、好意的な意見が多かった模様。また、着用しているスタッフの姿を見て、「あんなに自然に掛けられるなら、自分も掛けてみようかなとサングラスへの抵抗感が薄れた」という声もあったそう。スタッフが身近なスタイルサンプルとなり、それがPRにもつながっているようです。
“屋内でもカラーレンズ”が
ひとつの選択肢になるように
今回取材を依頼するにあたり、「もしこの取り組みがお客様からのクレームなどで取りやめになっていたらどうしよう」と考えたりもしたのですが、その心配は杞憂だったようです。
掛けることでPRになるのはもちろん、きっとスタッフさん自身も日常的に掛けることで、シーンに応じて使いやすいカラーやレンズ濃度などに気付きがあったり、スタイリングについても自身の経験を踏まえて提案しやすくなったりするといったメリットがあるのではないかと思います。
また、個人的にはお店に来る人が“店内=室内でサングラスを掛けているスタッフを目にする”ということも、意味があることだと感じています。というのも、現在LED照明やデジタルデバイスなどで眩しさを感じる人がいるなかで、やはり室内でのカラーレンズ着用にはまだまだ躊躇してしまう人も少なくないはずで。そうしたなか、室内で淡色レンズを自然に掛けこなしているお手本が身近にあれば、もっと取り入れやすくなると思うんですよね。
光過敏の私としては、そうした点も含めこの取り組みに意義を感じ、取材をさせてもらった次第です。眩しかったら無理をしないで、サングラス。しっかり紫外線&眩しさ対策をして、夏を楽しみましょ。