【伊藤美玲のめがねコラム】第104回「機能レンズは適したシーンでこそ役に立つ」
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夏本番を控え、眼鏡店ではサングラスが店頭に置かれているのをよく目にするようになりました。以前に比べれば、サングラスはかなり身近な存在になってきているように思います。最近では、調光レンズサングラスを付録にした雑誌も発売されるなど、機能レンズの利便性もじわじわ浸透してきているのかもしれません。
そう、調光レンズや偏光レンズといった機能レンズは、生活の質やスポーツのパフォーマンスまで上げてくれる本当に便利なアイテムです。ただし、それは適したシーンや用途で使ってこその話。じつは誰かにとって便利なレンズが、必ずしも自分にとって便利に使えるものとは限らないのです。
調光&偏光レンズが不便になった!?
たとえば、調光レンズ。紫外線の量に応じて色づく調光レンズは、室内や夜間はめがねとして、昼間の屋外ではサングラスで使え、1本で2役を果たしてくれます。掛け外しの手間もないので、抱っこなどで両手がふさがりがちだった子どもとのお出かけ時などは、かなり重宝しました。そのことは、以前のコラムにも書いた通りです。
ですが、子どもを抱っこしたり手をつないだりする必要がなくなった今、私には日射しの強い日に日傘をさす余裕が生まれました。日傘には遮光&紫外線カット機能があるため、残念なことに調光レンズは色付かないわけです。日傘がきちんと仕事をしている証拠ではあるのですが、傘の先の視界は眩しく、道路の照り返しもつらい……。
さらに、ここ数年スーパーマーケットなどの照明でも眩しさを感じるようになった私にとっては、室内でレンズがクリアになるというのも、あまりありがたい機能ではなくなってしまったのでした。
偏光レンズ(※1)についても、ここ数年で変化が。私は偏光レンズのすっきりした視界が大好きなのですが、一方でスマホなどの液晶画面を見ると、虹色のムラがしっかり見えてしまう傾向にあるんですね(※同じサングラスをかけて同じスマホを見ても、まったく虹が見えないという人もいるので個人差があるようなのですが)。以前はそれでもあまり困ることはなかったのですが、現在は電車のなかではスマホでSNSを見たり、Kindleアプリで本を読んだり。電車の車内案内表示も液晶となり、駅や商業ビルにはデジタルサイネージがたくさん。場所によっては、視界が虹ムラだらけに……! そんな感じで、仕事で都内を移動するようなときには、偏光レンズの出番ががくんと減ってしまいました。
※1 偏光レンズ:
「偏光膜」という特殊なフィルムが入っているレンズで、光を一定方向にのみ通過させるような加工がされているため、自然光を通し反射光のみをカットするという効果がある。
自分のライフスタイルに必要な機能を
なんだかネガティブな話になってしまいましたが……。決して私は調光レンズや偏光レンズの機能を否定しているわけではないんです。何を言いたいかというと、選ぶべきサングラスは、これだけ自身のライフスタイルと密接に関わってくるものだということです。
繰り返しになりますが、機能レンズは適したシーンや用途でこそその威力を発揮するもの。外遊びやスポーツなどで便利に使えることは言うまでもありません。
ですが、自分の日常生活には本当に調光や偏光機能が必要かどうなのか。まずは、お店で相談してから決めるようにしてほしいと思います。日頃まぶしさを感じているのなら、それはどんなシーンでなのか。場合によっては調光よりも普通のカラーレンズのほうが便利に使えたり、クリップオンタイプにしたほうが便利に使えることもあるでしょう。それに、可視光調光という手もあるかもしれない。
偏光レンズの場合も、スポーツによって適したカラーが異なったりしますし、カラーによって視界の好みもあるでしょう。こちらも相談&試着が欠かせません。人によっては偏光調光にしたらより便利に使えるかもしれませんし、必ずしも偏光機能が必要ではない場合もあるでしょう。
いろいろな選択肢があるからこそ、ぜひじっくり相談してから納得の1本を。お店で相談する場合、なるべく的確なアドバイスを受けるためにも「何をするときに」「どんな場面で」サングラスを使いたいのか。「自分が眩しいと思うのはいつ、またはどこなのか」など、自分の生活を振り返ってまとめておくとスムーズです。
かくいう私も、もちろんシーンによっては今も調光や偏光レンズの恩恵にあずかっています。 せっかく機能レンズを選ぶのなら、その利便性をしっかり享受したいもの。うまく活用することで、夏のお出かけやレジャーがより快適なものになりますように。
◎調光&偏光レンズについてもっと深めたい方はこちら東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。