【伊藤美玲のめがねコラム】第103回「まぶしいときは我慢しないでサングラスを」
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先日、あるコラボレーションのプレスリリースが発表になりました。そう、関ジャニ∞の安田章大さんと、アイウェアブランドGROOVERによるサングラスです。
安田章大さんとのコラボレーションサングラス 「GROOVER × SHOTA YASUDA『i』」7月1日に発売
※抽選販売の申し込み受け付け期間は終了しています。
上記のリリースには、安田さんご自身からのメッセージも。そこには、安田さんが2017年に髄膜腫の手術を受け、その後遺症による光過敏に悩まされているため、サングラスを掛けていることが綴られています。
アイドルが、サングラスを常時着用する。きっと、相当な覚悟とご苦労があったのではないかと思います。そもそも、後遺症を抱えながらお仕事に復帰するだけでも大変なはずです。メッセージのなかにも、「サングラスをつけてる事で 誰かに何かを言われるとか 色眼鏡で見られる事はよくありますが」と書かれているよう、メディア露出の多い人気アイドルであるがゆえに批判を受けることも少なくないだろうことは想像に難くありません。
だからこそ、「光がつらいなら臆することなくサングラスをかけよう」という安田さんのメッセージは響くし、光過敏をはじめ、何らかの要因で日常的にサングラスを必要とする人にとって、安田さんの活躍は励ましになっていると私は思います。
“光がつらい”は、ある日突然やってきた
そう感じるのは、程度の差こそあれ私自身も眩しさに弱いことが関係しています。
忘れもしない2020年7月のこと。いつものように自宅で原稿を書き、夕方子どものお迎えに行こうと立ち上がった瞬間に耳鳴りが始まり、それはいつしか頭痛を伴いながら頭の全体で鳴るように。以来、室内の明かりさえも眩しく感じられるようになり、ひどいときには真っ暗な部屋に一日中閉じこもって過ごすこともありました。もともとまぶしいのは苦手でしたが、ここまでひどいのは初めての経験。このときはもうライターとして活動していくことを諦めかけていたほどでした。
そんなとき助けになったのが、サングラスです。それをかけることで耳鳴りや頭鳴(ずめい)が消えるわけではありませんが、光が和らぐだけである程度気持ちが落ち着いたものです。サングラスのおかげで家族と明るいリビングで過ごすこともできるようになり、その後病院にも通い始め、現在も症状と付き合いながらではありますが、日常生活が送れるようになっています。
下の写真の度付きめがねは、一番症状がつらかった頃に作ったものです。
なぜ青いレンズにしたかといえば、それが一番私にとって見え方が心地よかったから。室内や夜間にも使うことを考えて、レンズ濃度は25%にしてあります(昼間の屋外では、もっと濃いものを使うこともあります)。
まだまだ躊躇してしまう“室内でのサングラス”
サングラスを日常使いするようになって気が付いたのが、サングラスに対する世間の目と、それを過剰に意識してしまう自分自身の存在でした。
当時はまだ子供が幼稚園生だったので、毎日の送り迎えもあれば、ピアノの習い事にも付き添いが必要で。送り迎えは屋外だからまだしも、ピアノの教室内で母親がサングラスを掛けることには、やはり居心地の悪さを感じたものでした。なぜなら紫外線が降り注がない屋内、一般的にはあまりまぶしいと感じられていない照明下でのサングラス着用は、やはりカッコつけているだけと思われてしまうだろうから……。そのため、先生や同じクラスの保護者たちには理解してもらえるように、自分の事情を伝えたものです。
逐一事情を説明できないシーンでは、着用を躊躇してしまうことが無いわけではありません。そして、躊躇しながら思うのです。私の心の奥に潜んでいるこの意識こそ、サングラスへの偏見そのものなのではないか、と。他人のサングラスには寛容になれるのに、自分自身の着用には迷いが生じている。“眼鏡ライター”という仕事をしている私でも躊躇するぐらいなのだから、本当はつらいのにサングラスをせず我慢している人は少なくないのだろうと思います。
でも、やっぱり我慢はよくない。自分の体は、自分で守ってあげないと。サングラスはそのための手段なのだから、つらかったらかけたらいいんです。自分のことを守りながら、なおかつお洒落もできちゃうなんて最高のアイテムじゃないですか。
まだまだ“色めがね”で見られることがあるとはいえ、ここ数年でサングラスの有用性が語られる機会は増えてきていると思います。以前も紹介しましたが、運転手の眩しさ対策のためにサングラス(保護めがね)を取り入れる鉄道会社は増えてきているし、最近ではZoffが「従業員のサングラス着用を自由化」を発表しました。
リリースには、「目の保護とファッション性を兼ね備えたアイテムとして、“サングラスの日常使い”を提案」との記載も。そう。サングラスの有用性を知っているめがね業界こそ、積極的にかけやすい雰囲気を作っていかないと。店舗数の多いZoffが打ち出すことで、室内の照明やデジタルデバイスの眩しさ対策としてのカラーレンズの活用がもっと浸透していけば嬉しいなと思います。
自分にとって快適なカラーを見つけて
最後に。私は主にブルーのレンズを愛用していると書きましたが、それが必ずしも同じ症状を抱える人におすすめのカラーというわけではありません。25%というカラー濃度も然り。そもそも「光がつらい」という人のなかには、光によって頭痛やめまいなどの不調が引き起こされてしまう人もいれば、眩しさによって著しく見えづらさを感じる「羞明」の方もいます。そして、その“つらさ”やまぶしいと感じる程度も人によってさまざまでしょう。
ですから、光がつらいならまずは医療機関や知識をもった眼鏡店に相談することをおすすめします。とくにつらい症状を抱えていない場合でも、誰かにとって快適なカラーが、自分にとっても快適なカラーとは限りません。レンズカラーや濃度を選ぶときには、必ず実際にサンプルレンズで見え方を比較したうえで決めてほしいと思います。
そうして自分が快適に使えるカラーが見つかったら、きっとサングラスが手放せなくなるはず。本当は、多くの人がこの快適さを知れば、「かっこつけ」なんて意識は消えると思うんだけどなぁ……。私の力は微々たるものだけど、自分自身が堂々と楽しんでかけることで、まずは周囲の意識から変えていけたら。改めてそう思ったのでした。