【伊藤美玲のめがねコラム】第68回「“似合う”ものと“好き”なもの」

先日のイベントが終わってからずっと、「似合うめがね」について考え続けています。

9月はこの増永眼鏡のイベントに加え、女性向けの生活情報誌からめがね選びについての取材を受けていたこともあり、「似合うとは?」ということをとくに考え続けた1か月でした。でも、考えれば考えるほど「似合う」ということが、わからなくなってくるのです。

そもそも、似合うという概念は曖昧です。それは、はっきりと基準が数値化されているわけでも言語化されているわけでもありません。個人によって感じ方は違うだろうし、「似合う」「似合わない」の境界線は決してはっきりしたものではなく、グラデーションのようなものでしょう。

たとえば、めがね選びで「似合わない」と感じるときというのは、明らかにサイズが合っていないというのはもちろんのこと、「顔には合っているけれど、好きじゃない」「初対面の人が見たら似合っていると思うかもしれないけど、このめがねは自分らしくはない」といったものも含まれていると思うんですよね。

それはもう、見た目だけで判別できることではありません。
それゆえ、「似合う」「似合わない」の判断基準には、その人のもつ雰囲気、キャラクターを含めた“テイスト”も含まれると思っていて。先日のイベントでも、めがね選びに大切なポイントとして以下の話をさせてもらいました。

S サイズ
T テイスト
O オケージョン

自分の好きなテイストであること、そして自分の洋服や小物のテイストとマッチしているということ。顔にフィットしていることに加え、これらがとても重要になってくると私は思います。

しかしこうなると、「では自分の好きなテイストの洋服は、そもそも自分に似合っているのか?」という疑問が生まれたりします。あーもう、ややこしい(笑)。

というのも、私は学生の頃、自分の着たい服のテイストが、自分の顔に合わないことに悩んだことがありました。私が好きだったのは、丸襟のシャツや、ふわっとしたラインのスカートやワンピース。それに、ベレー帽。そう、シンプルでいてガーリーな雰囲気ですね。ブランドでいうなら、「bulle de savon」とか大好きでした。

でも、私の顔は、ちょっとキツく見られがちな「シャープ」とか「クール」というふうにカテゴライズされる系統。だから、丸襟がしっくりこないんですよ。本当に。でも、着たいんです。どうしても。

そこで頼ったのが、めがねでした。
シャープで堅苦しい顔立ちを少しでも和らげたくて、前髪をパッツンにして丸みのあるプラスチックフレームをかけました。その頃、一時コンタクト派になっていた私が、外でもめがねをかけるようになったのは、自分が着たい服に顔のテイストを少しでも近づけたかったからなのだと今改めて気づかされました。
とはいえ、それが本当に似合っていたのかどうかは疑問が残るのですが……。

優先するべきは、「似合う」なのか「好み」なのか……。これについては、今でも迷うことがあります。似合うめがねについて人前で語る機会のある私も、まだまだ完全なる答えが見い出せているわけではありません。

私は仕事柄、自分のスタイルを確立している人に会う機会も多いのですが、もしかしたら、そうした人は少数派なのかもしれません。だから、みんな何かの基準に頼りたい。「あなたに似合うのはこれ」って言われたい。パーソナルカラーや骨格診断、顔タイプ診断などが選びの基準として支持されているのは、きっとそういうことなのでしょう。

「似合う」とはなんなのか。どういうことなのか。少しでもそのヒントを得るために、じつは今度パーソナルカラー診断、骨格診断、顔タイプ診断をまとめて受けてみることにしました。
「〇〇タイプ」とカテゴライズされ、似合うものをコレと決められてしまうのはあまり好きではないのですが、だからこそ一度、その道のプロの話を聞いてみようと思ったのです。

診断を受けて自分の考えがどう変わるのか。その結果については、追ってお話しすることにしましょう。