
【伊藤美玲のめがねコラム】第53回「めがねとメイク③ 色選びに思うこと」
それは、とある取材を受けたときのこと。
出来上がった記事を見ると、そこに写る自分の顔が何だかぼんやりして見えた。でもそれは、カメラのピントの問題でもなければ、めがねの度数の問題でもない。そう、単に自分の顔にしまりがなかったのです。
40代になってからというもの、次第に輪郭はゆるふわになり、肌のハリツヤもイマイチに。なんというか顔に華がない。写真によりその現実を突きつけられ、慌てて口紅を買いに行きました。まぁ、それを機にメイクに興味を持つようになったので、今思えば良いきっかけになったのだけど……。
その時に買ったのは、赤いリップ。とりあえず、顔を明るく見せることはできました。でももちろん、フレームとの相性も考えなくてはいけません。赤リップはその主張ゆえハマればとても女性らしくエレガントだけど、色の系統が異なるめがねだとケンカしてしまうことも。いやはや、そのバランスが難しい。というわけで肌馴染みの良いブラウン2色とベージュも買い足し、めがねや服によって使い分けています。本当は、まだまだ増やしていきたいのだけど。
きっとメイクが好きな人は、もっと繊細にシャドウやブロウ、チークやリップの色を日々使い分けているのでしょう。そこにめがねが加わると、とたんにそれまでの黄金バランスが崩れてしまう。それって、一大事です。しかも近視が強ければ目の大きさまで変わってしまうわけなので、とくに女性がめがねを敬遠しがちなのも頷けます。めがねメイクに悩む人も少なくないはずです。
私はお風呂と寝る時以外はずーっとめがねを使っているので、メイク=めがねメイクとなります。なので「めがね着用時」と「それ以外」というメイクの使い分けはなく、メイクにおいてはあくまでめがねが主役。その日かけるめがねを決めて、着る服を決めてから、ポイントメイクの色を決めるようにしています。
やっぱり、めがねがそうであるように、メイクの色も顔だけで完結させず服や小物など全体のバランスを考えたほうが、お洒落に見えるように思うんです。色のまとまりとか、テイストとかね。自分はまだまだメイクのテクニックがないこともあり、細部の作り込みよりバランス重視。あとはめがねが映えるようにするために、肌のベース作りはしっかりと。繊細なメタルフレームほど、そこは気を使っています。いや、まだまだ語れるほどではないのですが……。
全体のバランスづくりでお洒落だなぁと思うのは、ジャーナリストの大宅映子さんです。先日テレビに出演されていたときは、薄いグレートーンのシックなお洋服に、フロントがアリボリー系のプラスチック&テンプルが赤いメタルのめがねをかけて、赤のリップ、赤のマニキュアを付けていらっしゃいました。その赤の利かせ方のさりげなく巧妙なこと! 思わずテレビの前で唸ってしまったほどです。
めがねとメイクの情報は、ネットで検索するといろいろ出てはくるけれど、長年のめがねユーザーとしては「ん?」と思うものもちらほら。ここでも何度か書いていますが、今はメイクの本や雑誌を読んだり、動画を見たり、あとは実際にカウンターでいろいろなものを試したりしつつ、自分なりのめがねメイクを模索中です。
あぁ、もう少し若いうちからメイクにハマっていたら良かったな……。なんて思ったりもするけれど、なんだか新しい趣味ができたようで嬉しくもあるのです。

東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。