【伊藤美玲のめがねコラム】第62回「子どもの斜視や弱視を見逃さないために」
6月半ば頃、WEBやテレビなどで子どもの「斜視」についての話題をよく見かけました。
調べてみると、6月14日に日本弱視斜視学会総会と日本小児眼科学会総会の合同学会が行われていた模様。
6月15日付の東京新聞WEB版を見ると、
”浜松医科大の佐藤美保病院教授らの研究グループは、短期間に片方の目の瞳が内側に寄って左右の視線がずれる「急性内斜視」について、子どもや若者の間でスマートフォンなどの過剰使用が影響している可能性があると発表した。”
とあります。
“研究グループは今後患者やリスク因子を詳しく調べ、因果関係を明らかにする”
とのこと。現段階で断定はされていないのですが、報道されたものを見ると、やはりスマホの長時間使用が原因といった内容になっていますね。
なかでも気になったのが小さな子への影響です。小さな子どもは体が小さく腕が短いため、スマホとの距離がより近くなってしまいます。
NHKニュースウォッチ9でコメントをしていた眼科医によれば、「視力の発達はだいたい9歳までで完成すると言われていて、9歳以前に斜視があると、弱視になる可能性が高い」と。
スマホが目に悪影響を与えるということはもちろんわかっていたけれど、ここまで具体的に言われると、改めて不安に。親として現在4歳の我が子のことが俄然心配になってくるわけです。
もちろん、スマホを見せないことが一番なのはわかっています。でもね、今やもう完全に子どもをスマホから離すというのは、現実的な解決策とは言えないでしょう。親だって子どもの前でスマホ見たりするしね……。
完全にスマホを避けられないのなら、せめて目に何かあった時にすぐに気づいてあげられるようにしたい。そう思い、先日かかりつけの小児科でとある検査を受けてきたんです。
それが、スポットビジョンスクリーナーという機器を使った目のスクリーニング検査です。この検査の存在は、小児科の待合室に貼ってあったポスターで知りました。
そこには、「わずか数秒で…お子さんの眼、検査してみませんか?」とのキャッチコピーが。しかも費用は500円とのこと(※注:医院により異なります)。
斜視が話題になっていたこともあるし、我が子が幼稚園での視力検査をきちんと受診できているのかという不安もあったので、検査を受けてみることにしました。
名前を呼ばれ薄暗い部屋に入ると、看護師さんが両手に乗るぐらいの機器を持って立っていました。子どもを椅子に座らせると、モニターの画面に子どもの両目が映るよう看護師さんが動いて機器の位置を調整し、ものの数秒で終了。
機器と子どもの目は1メートルぐらい離れているから怖がらなかったし、じっと座っているだけで特段指示に従う必要もない。これなら小さな子どもでも簡単に受けられるはず!
その結果は、すぐに1枚の紙にプリントされ、度数や乱視度数、乱視軸、眼位のズレの方向と角度などがわかります。もちろん、医師からの説明も。
我が子は、とくに精密検査の必要はないという結果でした。その安心が500円で得られるなら安いものです。この検査を宣伝する義理はまったくないのですが(笑)、私自身は本当に受けて良かったなと思いました。
ちなみに、我が子が受診した小児科の場合は、風邪などの診療のついでに予約なしでこの検査を受けることが可能。この気軽さも大きな魅力です。
「眼科に行くまでもないかな」と親が自己判断をしていても、じつは弱視だった! なんてこともあり得るわけですから……。
この検査はあくまでスクリーニングであり、精密検査にとって代わるものではないとのこと。ですが、「要検査かどうかの判断材料としては有効」との意見を、何人かのめがね屋さんからいただきました。
たしかに、3歳児検診のときに自宅で行なう検査よりは、親としても安心です。だって素人の自分がやる検査なんて、本当にきちんとできているのか信用ならないですから。
実際、福井県鯖江市では平成27年度から両眼開放オートレフケラトメーターによる検査を行なうようになったところ、精密検査必要者と診断される子が5倍以上になったという結果が出ているそうです。
子どもの目のことが気になるお父さん、お母さん。もし、かかりつけの小児科でこのようなスクリーニング検査を実施していたら、ぜひ利用してみてはいかがでしょう。
もちろん明らかに異常がありそうなときは、眼科へ行くようにしてくださいね。
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。