【伊藤美玲のめがねコラム】第31回「子どもにめがねはかわいそう?」
先日、子どもの3歳児健診に行ってきました。
3歳児健診では、視力検査があります。自治体により異なりますが、まずはあらかじめ送られてきた視力検査キットを使い自宅で検査。そこで見えない指標などがあれば、健診会場でさらに検査となります。うちの子は二次検査を受ける必要はなしと判断されましたが、この健診で初めて自分の子が弱視であることに気が付く場合も多いのだと思います。
子どもにめがねが必要になる。
その事実にショックを受ける親御さんは、やはり多いのでしょう。
先日、とあるめがね屋さんのブログでも”子どもが治療のためにめがねを作ったところ、祖父母から「こんなに小さなうちからめがねをかけるなんてかわいそう」と言われてしまった”というエピソードが語られていたのを目にしました。
最近ではお洒落な子ども用のめがねも増えてきているし、可愛いめがねコーデで人気の双子りんか&あんなちゃんなどの登場で、世間の認識は多少変わってきているのかと思っていたのですが……。(まぁ、世代によっても違うだろうけれど)
先ほどのブログで触れられていたのは弱視の治療のためのめがねだと思われるので、正しい眼の発育を促すためにかけるものです。だから祖父母のひと言によってめがねが嫌いになり、かけなくなってしまうようでは、治療の機会を奪ってしまうことになる。それこそ、”かわいそう”なことなのではないでしょうか。弱視だけでなく近視のめがねも、かけなければ黒板が見えづらく授業に集中できないかもしれない。それだってかわいそうです。
私は10歳頃から視力が低下し、11歳になるとめがねを常用するようになりました。ところが私の両親もご多分にもれずめがねを嫌う人たちで「写真を撮るときは必ずめがねを外しなさい」と言われて育ったものです。子どもとはいえ、やっぱり自分が身につけているものを否定されるのはイヤな気持ちがしました。私はそんなに悪いものを身につけているの……?と。
もちろん、めがね無しで見えればそれに越したことはないし、運動だってしやすいでしょう。でも、めがねが必要と診断された子に、「かわいそう」とか「なるべく外しなさい」と言う必要、ないじゃないですか。これからの人生において必需品になるものの印象を、親自らが悪くして何の意味があるのでしょう。
かわいそうと思うのは自由ですが、”同情するなら、めがねくれ”ですよ。否定的なことを言う前に、子どもが楽しく安全にかけられるめがねを見つけてあげることに労力を使ってほしいんです。
私は絵本作家、せな けいこさんの『めがねうさぎ』という絵本が大好きなのですが、そのなかで、うさぎのうさこが初めてめがねをかけたときの気持ちが
ちょっぴりはずかしく、ちょっぴりとくいです
と描写されています。
子どもが初めてめがねをかけたときって、まさにそんな気持ちだと思うのです。
だからこそ、周りの大人たちや友達に褒められたら、”とくい”という気持ちのほうが大きくなるし、かわいそうなどと言われたら”はずかしい”という気持ちのほうが大きくなる。
子どもがめがねを楽しくかけられるかは、周りの大人にかかっているといっても過言ではないのです。
だから、もし子どもにめがねが必要になったら、まずは身近な存在である親が「素敵だね」「かわいいね」「カッコいいね」ってぜひ褒めてあげてください。今は子どものめがねもデザインのバリエーションが豊富になっています。安全性、かけやすさ、サイズなども考慮しつつ、子どもと一緒にめがね選びを楽しんでもらえたらと思います。
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。