めがねでもっと感動できる!〜「北村Domont」北村拓也さんが考えるめがねの可能性〜
目次
オーダーメイドでめがねの可能性を広げる
つくり手の側から見ると、オーダーメイドと既製品のめがねの違いはどこにあるとお考えですか。
北村日本でも手づくりのめがねってたくさんあります。それらのめがねと、ぼくが手がけているオーダーメイドのめがねの大きな違いは、大量生産をしているかどうかという点です。基本的に日本のめがねは、ひとつのモデルを何百本も一度に売らないといけない。例えば、大量生産したモデルが5本しか売れなかったとしたら、大変な問題になってしまいます。でもぼくの場合は受注生産なので、5本売れたら5本つくれば、それでいい。
まずは、ビジネスモデルが大きく違うということですね。
北村そうですね。だからデザインにしても流行りを意識する必要がないし、もっと言えばオーバルとかウェリントンとか、そういうシェイプにこだわらずに、自分のつくりたい形をつくることができるんです。
北村さんは、職人であると同時に、デザイナーでもある。デザインをする際のテーマのようなものはありますか。
北村それもやっぱり、職人が生き残っていく仕組みをどうつくるかっていうことをベースに考えています。例えば、「50個の突起物のついためがね」をつくることになったとき、その作業が職人には1時間かかるのに、機械なら10分でできるならば、それはもう機械に任せるべきです。無理して職人がつくることに意味はないと思うんです。だからぼくがデザインをするときは、職人がつくるべき、これからもつくり続けていけるということを考えていきたい。
逆に、ユーザー側から見て、オーダーメイドの良さってどこにあると考えられていますか。
北村めがねって一般的にサイズ展開があまりなくて、あってもS・M・Lぐらいなんです。でも、人間の顔はいろいろな形、大きさをしている。それなのに、めがね全体をただ単に大きくしたり小さくしたりっていうのは、ちょっと違うと思います。オーダーメイドなら、レンズだけ2mm大きくするとか、鼻幅を2mm大きくするとか、そういう調整ができる。結局、めがねが似合うとか似合わないっていうのを決めるのは、サイズ感なので。
色や形でなく、サイズが大きな決め手なんですね。
北村色や形もありますが、「似合わないめがね」はサイズに問題があることが多い。第一印象で「可愛いな」とか「かっこいいな」とその人が感じるめがねが、その人に一番似合うめがねだと思うんです。だったら、そのめがねのサイズをその人に合わせてあげたいじゃないですか。
オーダーメイドは、自分がいいと思っためがねを、自分のサイズに合わせることができるということですね。
北村めがねをかけて顔が大きく見えてしまうようだったら、智(リムからテンプルにつながるめがねの両端部分)だけわずかに大きくするとか。そういう細かい調整でめがねってだいぶ印象が変わるんですよ。オーダーメイドという仕組みを使えば、そういうことができるようになるんです。
最後に、これから「北村Domont」でどのようなことをしていきたいと考えていますか?
北村まずは、もっとオーダーメイドでできるめがねの存在を多くの人に知って頂きたいです。そのためには、少しずつでもいいので日本の「北村Domont」取扱店も増やせたらいいですし、基本的な計測をしてくれるめがね屋さんとの技術共有も大切です。オーダーメイドのめがねでもっとお客様を満足させられたらいいなと思います。
職人としてめがねをつくり続けていくために
「これからも職人が仕事としてめがねをつくり続けていくためには、どうしたらいいのか?」
北村さんの考え方や行動には、いつもその問いがこだましているようでした。
フランスへと渡ったことも、めがねをアートに近づけることも、オーダーメイドにこだわることも、全ては職人としてめがねをつくり続けていくため。シンプルで、ブレない、その強さや純粋さは、「北村Domont」のめがねの美しさにそのまま反映されているように感じられました。
大量生産の他にも仕組みをつくり、めがねをつくり続けていく。それが、「めがね」にもっと多様なあり方をもたらしてくれる。
それにしても、めがねってなんて繊細で可能性に満ちているんだろう。そんなことを、北村さんのお話を伺うことで、改めて実感することができました。
北村さんは現在日本国内では年1回のペースで、オーダーメイドめがねの受注会を開催しています。残念ながら今年の受注会はすでに終了してしまいましたが、来年もまた開催されますので、気になった人は細めに情報をチェックしてみてはいかがでしょうか!
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