あなたの変化に、そっと寄りそう

あなたの変化に、そっと寄りそう

【わたしはめがねのここが好き!】第5回 オートクチュールデザイナー 髙松太一郎さんの場合

【わたしはめがねのここが好き!】第5回 オートクチュールデザイナー 髙松太一郎さんの場合

| 安達友絵
このエントリーをはてなブックマークに追加

めがねが大好き!
でも、なかなかそんなことを話せる場所もなければ、相手もいない…。
ならば、「めがね新聞」で思う存分語っていただきましょー !! という企画、題して「わたしはめがねのここが好き!」。

第5回は、オートクチュールデザイナーの髙松太一郎さんにインタビューしてきました。「実は、自分がめがね好きだと意識したことはなかったんです」と話す髙松さんですが、お話をうかがうと「ここ1、2年で気づいたら8本のめがねを買っていた」というほどの立派なめがね愛好家!

クリスチャン・ディオールやプラダなど、ラグジュアリーブランドも手がける髙松さんですが、お話を伺っていくと、数ミリのずれも許されないという繊細な作業、フィッティングや採寸などの接客業の中で、めがねがとても重要な役割を果たしていることがわかりました。

また、洋服のお仕事と並行して、日本と海外の子どもたちが互いにこいのぼりを作り、それを交換することで国際交流を行う「KOINOBORIproject.」という活動も長く行っている髙松さん。こちらのお仕事についても、お話をうかがってきました!

めがねを選ぶことで、自分の「顔」と向き合う

髙松さんは、現在8本ほどのめがねをお持ちだと伺いました。これは、どのくらいの期間で集めためがねなんですか?

髙松ここ1、2年くらいです。いいなと思うと、すぐに買ってしまうので。

【わたしはめがねのここが好き!】第5回 オートクチュールデザイナー 髙松太一郎さんの場合

ずいぶんと短期間ですね!数年で集めたものかと思いました。ちなみに、めがね歴はどのくらいになりますか?

髙松高校受験が終わった頃から、ずっとです。当時僕はバスケ部で、中学3年の夏に引退するまで、勉強を全然してなかったんです…なので、いよいよ受験だという時に、追い込みで夜中も暗い部屋で勉強を つしていたら、短期間で一気に視力が下がってしまいました(笑)。その時は、親に「これでいいんじゃない?」という感じで選んでもらっためがねをかけていましたが、部活をやっていたこともあって最初は抵抗がありましたね。

その後、ご自身でデザインを気にしてめがねを選ぶようになったのは、いつ頃からですか?

髙松今の仕事で、人前に出るようになってからですね。接客がほぼ無いテーラーやデザインの仕事をしていた頃は、人目を気にしたことはなかったんですけど、ヨーロッパのラグジュアリーブランドで働くようになって、採寸やフィッティングでお客さまと顔を合わせるようになった時、上司から「あなた自身の身なりも気にしなさい」と助言されたんです。それがきっかけで、めがねもそうですし、髪型や服装も気にかけるようになりました。当時はプラダで働いていたので、そのブランドの中から自分に似合うめがねを探しましたね。

身なりの一部として、めがねもこだわるようになったと! ちなみに、髙松さんのお仕事である「オートクチュールデザイナー」とは、あまり聞き慣れない言葉なのですが、どのようなお仕事なのでしょうか?

髙松オートクチュールとは「自分のためだけにあつらえた服」という意味です。オートは「高い(HAUTE)」、クチュールは「仕立て服(COUTURE)」のことで、ひとつの洋服を仕立てるために、その人に合わせて採寸、仮縫い、本縫いなどを行います。

世界にただひとつだけの、自分の身体に合った洋服なんですね。髙松さんは、なぜ今のお仕事に就かれたのでしょうか?

髙松僕は、特に現代の移ろい行くものとしてのファッションではなく、人の身体に対しての探究心があるんです。今の仕事はなんとなく始めたところがあるんですけど、自分の仕立てた衣服を人が身にまとった時に、「あ、やっぱりこの仕事がやりたい」と思ったことをよく覚えています。

【わたしはめがねのここが好き!】第5回 オートクチュールデザイナー 髙松太一郎さんの場合

ファッションではなく、身体に興味がある。それは面白い視点ですね! めがねも、顔の形に合わせて、フレームや鼻盛りなどいろいろと選ぶことができます。そういう意味では、めがねを選ぶ時、人は視力だけではなく、自分の「顔」に改めて向き合っているんだなと、お話をうかがっていて思いました。

髙松自分の骨格や鼻のかたちなんかにも、改めて向き合いますよね。

先程、「KOINOBORIproject.」を一緒に進めている「NPO法人 二枚目の名刺」の小林忠広さんが、高松さんにオーダーしたスーツのフィッティングをされていましたね。小林さん、自分の身体にぴったり合うように仕立てられた服というのは、どのような感覚でしたか?

小林僕は昔ラグビーをしていたこともあり、筋肉が腕や肩につきやすくて、実はスーツが苦手なんです。でも、さっきフィッティングした時、髙松さんが肩の生地を数センチ調整しただけで、腕の上げ方がとても楽になったんです!魔法みたいでした。きっと髙松さんには、洋服を通して身体の動かし方も見えているんだなと思います。

たった数センチの微調整で、そんなに変わるものなんですね!

髙松スーツは、肩の内側を作り込むことに一番時間がかかるんです。そんなふうに、衣服を仕立てている時も、その人の「身体」と向き合っているんです。首から腰にかけての曲線、肩先の前後の振れ方や傾斜、肋骨と骨盤の距離など人によって違います。さらにそこに筋肉がのるので、みんな別の生き物と言っても良いぐらいそれぞれの身体って違うんです。骨格から読み取って、身体の動きを把握してこそ、その人が着て心地良い衣服が仕上がります。
だからオートクチュールって面白くて、こうしてずっと続けているんだと思います。

【わたしはめがねのここが好き!】第5回 オートクチュールデザイナー 髙松太一郎さんの場合

繊細な「手作業」と人前に出る「接客業」を、めがねが支えてくれる

オートクチュールデザイナーとして、接客するようになった当初はめがねを必然的に探していた思うのですが、その後、選ぶこと自体が楽しくなっていったのでしょうか?

髙松そうですね。僕は、ビル・エヴァンスというピアニストが好きで、よく曲を聴いていたんですけど、「彼もめがねだ!」と改めて気づいて。そうすると、不思議なことに、更に彼の音楽が好きになったりするんです。僕はピアノが弾けるわけではないんですけど、ビル・エヴァンスのようなめがねをかけて、彼の音楽を聞きながら仕事をしていると、親和性が出てくるというか。ちょっと意識が変わるような感じがあります。

憧れの人に近づいたような感じでしょうか?

髙松そうですね。僕の好きなフェデリコ・フェリーニの映画『8 1/2』に出てくる、俳優のマルチェロ・マストロヤンニも役柄ではめがねをかけているし、ファッション界でいうとイヴ・サンローランもめがね姿がかっこいい。最初はあまり前向きな気持ちでかけていなかったけど、だんだんと「めがね、悪くないじゃん!」と思うようになりました。

めがねを通して、新しい世界が見えてくるのは楽しそうです!

髙松僕は誰かと一緒にめがねを買いに行くことがなくて、基本的にひとりで見に行くんです。だから、頭の中で「あの俳優がスクリーンの中でかけてたな」とか、誰かを重ね合わせないと選べなくて。そういう時、自分が憧れている偉人たちが後押ししてくれました(笑)。

【わたしはめがねのここが好き!】第5回 オートクチュールデザイナー 髙松太一郎さんの場合

お持ちのめがねを見ると、今お話に出た、ビル・エヴァンスやイヴ・サンローランのような黒縁タイプと、縁のないツーポイントタイプの二種類に分かれていますね。

髙松憧れとして黒縁も買うんですけど、仕事中は、ほぼ縁のないツーポイントのめがねを使っています。黒縁は個性も強くなってしまうので、人前でかけるのが恥ずかしいというのもあるんですけど、クリスチャン・ディオールのテーラーとして仕事をする時は、仕事着として白衣を着るので、黒縁めがねだと、研究者やお医者さんのような雰囲気になってしまうんです(笑)。

たしかに…! お似合いですが、白衣に黒縁めがねだと確かにキャラクターが強いのかもしれません。でも、どうして仕事着として白衣を着られるんですか?

髙松お医者さんも、白衣を着ますよね? あれは、自分の診た患者さんの体液や血液が他の方にうつらないように、常に清潔を保つためです。それと同じです。僕らの仕事も、汚れのついた状態で白いドレスを触ったら、一発でアウトなので。白いドレスに触れる時は、手の皮脂がつかないように手にパウダーをつけたりします。

なるほど。やはり繊細な手仕事なんですね。仕事の種類によってめがねを変えることもありますか?

髙松あります。例えば、生地を縫う時って、ひと針分の差も出しちゃいけないので、ひと針をすくうごとに3秒ずつくらいかかることもあるんです。1着2000万円以上のドレスもあるので、針を生地に通すにも手が震えるんですよ(笑)。そうすると、視界の隅に入るめがねの縁が雑音のように感じて気になるんです。そんな時は、正確な仕事をするためにも縁のないめがねを選んだりしますね。

【わたしはめがねのここが好き!】第5回 オートクチュールデザイナー 髙松太一郎さんの場合

1着2000万円…! 存在を感じないくらいのめがねが、繊細な作業を支えているんですね。

髙松でも、採寸やフィッティングなどの接客の時は、お客さまの記憶に残ってもらえるように、黒縁のものを含めて、あえて毎回違うめがねをかけたりします。「めがね変えました?」と気づいてもらえることも多くて、会話のきっかけにもなるんです。みんな、意外と人のめがねを見ているんですね。僕は、今回の取材の話をいただくまで、特にめがねについて考えたりしていなかったので(笑)。

いえいえ、8本もお持ちじゃないですか(笑)! お仕事のシーンに合わせて使い分けていたり、めがねへのこだわりも感じます。

髙松めがねについて、こんなに改まって話す機会がないので(笑)。でも振り返ってみると、日常の中で自分でも意識していたんだなと思いました。

1
2

タグ