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【わたしはめがねのここが好き!】第8回 映画監督・俳優 太田信吾さんの場合

【わたしはめがねのここが好き!】第8回 映画監督・俳優 太田信吾さんの場合

| めがね新聞編集部

映像としてどうしても残しておきたかった、西成という街の記憶

このあえてボロボロにしためがねをかけている主人公をとおして、西成の街を描いた今回の映画『解放区』ですが、西成を舞台にした映画を撮ろうと思ったのは何かきっかけがあったんですか?

太田2010年に、大学の卒業制作で作った自主映画を全国のコミュニティースペースで上映をする「コミュニティー映像祭」に参加しました。その会場のひとつに西成もあり、それで初めて訪れたんです。西成は、大阪の中心部や観光名所からそう離れてはいない場所なのに、その辺りの印象とは全く違っていました。沢山の路上生活者や日雇いの仕事を求めて毎日生きるのに必死な人達の姿を目の当たりにし、日本にはいまだにこういう場所があるのかとすごく衝撃を受けたんです。その僕が受けた感覚を描きたい、映像として残しておきたいと思いました。

【わたしはめがねのここが好き!】第8回 映画監督・俳優 太田信吾さんの場合
©2019「解放区」上映委員会

その映像祭以降も、実際に映画を撮るまで何度か西成に足を運ばれたんですか?

太田半年に一回ぐらい行っていましたね。また、月に1回、都内各地で街に出て「ワンシーンワンカットで撮影し1日で映画を完成させる」というプロジェクトを行なっていました。それを一度西成でもやろうということになったんです。

映画『解放区』の中で、主人公がかつて西成で取材をしたという少年の映像が出てくるのですが、あの映像はそのプロジェクトの時に撮ったものです。

その少年は、主人公が再び西成へ向かうきっかけとなった人物ですね。実在の人だったとは!

太田実は、彼らとは今連絡が取れないんですよね…。撮った映像を映画にするとは伝えていたので、問題は無いと思うのですが。だから、彼を探しに行くロードムービーという構成だったら、西成の街の景色や、現地の人と関わる瞬間なども撮れると思って、映画の構想を固めていったんです。

【わたしはめがねのここが好き!】第8回 映画監督・俳優 太田信吾さんの場合

太田監督は今までドキュメンタリー作品を多く撮られていましたが、映画『解放区』は一般劇場公開される太田監督の映画としては、初となるフィクションの作品だそうですね。

太田この映画はフィクションでありつつ、街の記録としての要素も併せ持つ作品でもあります。映画が完成してから公開されるまでの5年間に、「あいりん労働福祉センター」の取り壊しなどと街は大きく変化しました。

映画には、今はもう無いものもたくさん映っているので、そういった点でも特にそこに住んでいる人達にとっても特別な映画になったと思います。

太田映画の撮影にあたっては地元の住民の方々に協力をいただき、その方達がいなくては撮れなかった場面も沢山ありました。そういったところにも是非注目して観ていただきたいです。

ドキュメンタリーと間違えられるほどの演出や、一般劇場公開までに5年の月日が経っているという時間がもたらした重みなど様々な要素が詰まっていて、映画の描き方の新しい可能性を感じました。

太田僕は、映画の撮影をとおして、自分の価値観が揺さぶられたり、自分の想像を超えていく瞬間に遭遇したい、そして、そこにこそ映画を撮る意味があると感じています。また、社会に顕在化していないことを、映画で世に問いかけていきたいという思いもあります。

【わたしはめがねのここが好き!】第8回 映画監督・俳優 太田信吾さんの場合

この5年という月日が、この映画には必要だったということが良くわかりました。最後に、太田監督が次に準備している作品について伺えますでしょうか?

太田ドキュメンタリーに関しては、 Yahoo!ニュースで10分の短編映像を公開しています。WEBは観た人がすぐに行動に繋げていけるスピードがあるので、社会を変えていく上でのドキュメンタリーの力をすごく感じていて、こちらも同時進行で力を入れて行きたいと思っています。また、ほかでもフィクションの作品は、先述したダイビングをテーマにしたものを含めて2本企画が進んでいます。

先ほどお話しした、スマートグラスでの撮影も早く試してみたいですね。でもその前に、この丸めがねのフレームが曲がってきてしまっているので、こっちの方を先に買わなければと思っています。

そうなんですね! めがねを新調する際、よろしければ太田監督のめがね選びに是非「めがね新聞」も同行させてください!! 今日は、ありがとうございました。

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【写真】田島雄一

※丸メガネ研究会:
オリジナルの丸めがねフレームを開発や、調整技術を磨くなどして丸めがねの魅力を伝えているめがね屋さんの有志のグループ。

太田信吾(おおた しんご)

<プロフィール>
1985年生まれ。映画監督・俳優・映像ディレクターとして活動。長野県出身。大学では哲学・物語論を専攻。初の長編ドキュメンタリー映画『わたしたちに許された特別な時間の終わり』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2013で公開後、世界12カ国で公開。俳優として演劇作品のほか、TVドラマ等に出演。2017年には初の映像インスタレーション作品を韓国のソウル市立美術館で発表した。テレビ番組「旅旅しつれいします。」(NHK総合)、「情熱大陸」(TBS)やMV、舞台の演出も手がける。2018年〜ヤフーニュースでショートドキュメンタリーを連載中。子供の頃の夢は漁師。趣味は釣りとフットサル。

映画『解放区』

【わたしはめがねのここが好き!】第8回 映画監督・俳優 太田信吾さんの場合
©2019「解放区」上映委員会

10/18(金)よりテアトル新宿にて上映!

エグゼクティブ・プロデューサー:カトリヒデトシ|プロデューサー:筒井龍平、伊達浩太朗
アソシエイトプロデューサー・ラインプロデューサー:川津彰信
監督・脚本・編集:太田信吾
撮影監督:岸健太朗|録音:落合諒磨|制作:金子祐史|音楽:abirdwhale|Kakinoki Masato
助監督:島田雄史|制作助手・小道具:坂田秋葉|録音助手:高橋壮太
制作応援:荒金蔵人|現地コーディネーター:鈴木日出海、朝倉太郎|撮影助手:鈴木宏侑
エンディングテーマ:ILL 西成 BLUES -GEEK REMIX- / SHINGO★西成
(作詞:SHINGO★西成 / 作曲:DJ TAIKI a.k.a. GEEK)©2007 by Sony Music Publishing(Japan)Inc.
出演:太田信吾、本山大、山口遥、琥珀うた、佐藤亮、岸健太朗、KURA、朝倉太郎、鈴木宏侑、籾山昌徳、本山純子、青山雅史、ダンシング義隆&THE ロックンロールフォーエバー、SHINGO★西成 ほか

製作:トリクスタ|制作プロダクション:トリクスタ、ハイドロブラスト 宣伝:contrail|デザイン:武田明徳(VOX)
『解放区』上映委員会(トリクスタ+キングレコード+スペースシャワーネットワーク)
2014年/日本/カラー/ビスタ/114分/DCP/英語字幕付き上映/R18+/英題:Fragile
配給:SPACE SHOWER FILMS|©2019「解放区」上映委員会

『解放区』公式サイト
twitter @kaihoukufilm
facebook @kaihoukufilm

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