レスザンヒューマンチーフデザイナー甲賀潤さんインタビュー(後編)
目次
「新商品発売!」ってなってもテンションが上がらないみたいな?
甲賀潤そう(笑)。売れたときはテンションが上がるんですけど。ただ出たというだけだとそんなに…。「でたね」みたいな(笑)。
今までの作品の中で、思い入れのあるデザインはありますか?
甲賀潤あんまないんだよね(笑)。
どんどん次へ次へって進んでいっている感じですか?
甲賀潤そうじゃないといけないのかなと。よく、「前あったあれみたいの作ってくれませんか?」って言われるとちょっとガッカリするかも。
どんな感じなんです?
甲賀潤そのときから進歩してないんじゃないのか、それを超えてないんじゃないのか、と。駄目だなって思います。
これからやってみたいデザインとかはありますか?
甲賀潤あんまないですよ。20年もやっているので「こういうのやりたいんです!」ってさすがにない。最初はみんな、こういうのがやりたいってあるじゃないですか。何年かすると何割かは溢れていっちゃうんですよね。こういうのやりたいって言ってできたケースと、できないでそのまま終わっちゃったケースもあるので。できたケースもそこで終わっちゃって、その先に進歩がないことがよくあるし。
デザインを続けるモチベーションはなんですか?
甲賀潤生活を考えるとやらなきゃいけないし。もう1つは今を生きているっていうもの。「過去のモデル良かったよね!すごいね!」って言われても、「そうじゃないんだよ。俺は今を生きているんだよ」って。そうは見えないんだったら「力が足りないんだ」と、「もうちょっとやってやるよ」って。今でも現役なんだよってことを証明したい。「いまだにすごいね」みたいな。そこが上手くいってないとここ数年思っていて、変えたいなと思い変え始めたんです。皆さんに広く認知してもらえるようになるまでにはもう少し時間がかかるな。
なるほど。それがこれからの展望ですか?
甲賀潤まだ、そういう風にみんな思ってないからね。説明しないでも分かってもらえないと駄目なんで。
めがねデザイナーのこれから
めがねデザイナーを目指す若者に一言おねがいします。
甲賀潤やめとけ!!(笑)
(笑)なんでそう思うんですか?
甲賀潤同じデザインを目指すなら、もっと未来のある……
めがねデザイナーは未来ないんですか…?
甲賀潤今でも市場は縮小しているとしか思えないですよね。例えば、“JINS”や“Zoff”に対してうちみたいなコンセプト系、それぞれの業界内に占める比率が変わらなかったとしても、全体が縮小してしまっているから売上が減っていくんです。志す人がクラシックのデザインをしたいというなら、やめておけと。そうじゃない場合は、縮小している中でシェアを増やさないといけない。
それはなかなか厳しいことで、その努力はもっと規模の大きい業界で発揮したほうが良いんじゃないかな。その方が頭の良い人、参考になる人、勉強になる人いるんじゃないかと。めがね業界は小さいからそんなにいない(笑)。
例えば、中国と日本の超セレブの比率がお互い1%だとしても、13億の1%と1億の1%では違うというのと一緒。小さい業界なので、そこに人生の参考になることを教えてくれる人に出会う率は少ないから。それでもやりたいと言うなら止めないけれど、その場合は我慢強くないとやってられない。
入る会社にもよるんだけど、メーカー系だと基本OEMの仕事が多いので、「こういうのが作りたい」と夢を持って来ても、毎回描くのはすごく普通のやつだったり。それを毎日毎日描いて、だんだん最初の気持ちなんてなくなって、しまいにはただ会社に行ってとりあえず図を描いて家帰るだけみたいになっちゃうケースが多いので、くじけないこと。運良くもっていた夢を形にできた場合、次を考えなさい、終わりはないよと。とにかく次。やるんだったらね。でも、やめとけ。
職業になると難しいですね。
甲賀潤個性があっても職業デザイナーとして無理なケースもあるからね。
アーティスト寄りな感じですかね。
甲賀潤良く言えば。でも作品ではなくて商品なので、自分を発表する場ではなく商品性を持たないと。妥協点を探すというのかな。商品である、商売である、売ってなんぼなんだっていう視点は間違いなく必要ですね。
ありがとうございました!
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