都内中学生の95%、また都内小学生の75%が近視!? 小・中学生の近視が増加!
目次
2019年8月、慶應義塾大学医学部眼科学教室のチームが小・中学生の「近視有病率」を調査、衝撃的な研究結果が発表されました。
日本での小児期の「近視有病率」を調査したもので、都内小学生の近視有病率は76.5%、都内中学生の近視有病率は94.9%という結果が出たのです。
まず、「近視有病率」とは何なのか? これがどういった調査だったのかを紐解きながら、子どもたちの視力について考えていきたいと思います。
「近視有病率」って何?
「有病率」とは、一時点における患者数の単位人口に対する割合のことを指します(有病率 =ある一時点の患者数 ÷ 観察人口)。つまり、この調査を実施した時点での、観察対象の生徒たちに対する近視患者数=近視有病率となります。これにより、観察対象の集団(この場合は都内小学生・中学生)における近視患者の割合を推測することが可能になります。
※「近視」がどのような状態なのかは、次の項で詳しく説明します。
慶應義塾大学医学部眼科学教室による調査
「近視有病率」の調査は、いわゆる健康診断等で行う視力テストとは異なります。 文部科学省が実施している学校保健統計によって、裸眼視力1.0未満の小中学生の割合が年々増加していることはめがね新聞でも紹介させていただきましたが、(小学生・高校生の視力が過去最低に!?どのくらい下がっているの?)近視有病率を含む近視に関する詳細な状況報告に関しては、ここ約20年間実施されてきませんでした。
そもそも近視とは、遠方のものを見る時に焦点を網膜上に合わせることができず、手前で焦点が結ばれることによって物がぼやけ、ハッキリと見えない眼の状態を指します。近視は屈折値によって判断されますが、その主な原因として、眼軸長(眼球の奥行)が過剰に伸び、 角膜から網膜までの距離が長くなる眼球の変形が知られています。 子どもは成長に伴って眼軸長が伸びるものですが、近視眼では特に長くなります。また強度近視となると眼軸長がさらに長くなり、黄斑変性や視神経障害などの合併症の危険性が上がります。 今回の研究では、屈折値と眼軸長の両方が測定されました。
深刻な近視有病率高さが明らかに
調査は、生徒1478 名(小学生726名/中学生752 名)のうち、保護者から同意が得られ、かつ検査当日出席した 1429 名に対して行われました。そのうち、近視進行予防の治療を行っている生徒や、視機能に影響を及ぼす眼疾患の既往のある生徒を除いた1416 名のデータが解析されました。
その結果、都内小学生 689人における近視有病率は76.5%であり、強度近視有病率は4.0%でした。特に小学1年生時点での近視有病率は、既に60%を超えていることが明らかになりました。
また、都内中学生727人における近視有病率は94.9%、強度近視有病率は11.3%で、中学生の3学年全てにおいて、近視有病率は90%を超えました。 これは、東アジアの他国の既報よりも高い有病率であり、中学生期における近視が深刻なものであることが示されました。
子どもたちの目を守るには?
近視有病率の増加はアジア系に多く知られ、香港、台湾、シンガポールでは、18歳における近視有病率が 80%を超えたことが2016年に報告されています(Rudnicka AR, et al. The British Journal of Ophthalmology, 2016)。 また日本でも、1989 年から1991 年の12 歳児における近視有病率が43.5%であったという報告が1999年になされています(Matsumura H, et al. Survey of Ophthalmology, 1999) 。
今回、約20年ぶりとなる日本における近視有病率を含む近視に関する詳細な状況報告(および学校全体を対象とした詳細な調査)によって、2016 年の報告/1999年の報告と比較しても、近視人口・強度近視人口がさらに増加したことが裏付けられたといえるでしょう。
私たちは子どもたちの目を守るために何をすればいいのでしょうか? 私が子どもだった頃よりも、めがねをかけている子どもは増えていますし、おしゃれで可愛いめがねも手に入るようになりました。
しっかりと子どもの視力に向き合いサポートするのはもちろんですが、めがねに対するポジティブなイメージを伝えるのも大切なことだと思います。【伊藤美玲のめがねコラム】でも、「めがねはかわいそう」ではなく、「めがね、かっこいいね」「めがね、かわいいね」と褒めてあげてほしいという思いが綴られていました。
子どもたちの視力低下をただ嘆くだけではなく、医学の力と素敵なめがねの力によって、自分の目とうまく付き合っていく方法を一緒に考えていってあげたいですね。
【参照】
小中学生の近視増加傾向への警鐘 -都内小学生の約 80%、都内中学生の約 95%が近視-
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2019/8/19/190819-1.pdf
テレビ局で営業・イベントプロデューサーとして勤務した後、退社し関西に移住。一児を育てながら、映画・演劇のレビューを中心にライター活動を開始。ライター名「umisodachi」としてoriver.cinemaなどで執筆中。サングラスが大好き。