色の見え方は人それぞれ。カラーユニバーサルデザインについて学ぼう。

カラーユニバーサルデザイン(CUD)という言葉をご存知ですか? CUDとは、「人間の色覚の多様性に配慮し、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方」のこと。私の目が見ている色と、隣の人が見ている色が同じとは限らない。その前提に立って、誰もが不便を感じない社会を実現するということです。……と、固い言い方をしてもよく分かりませんよね?では、かみ砕いて説明していきたいと思います。

色覚の違いは多様性。そのメカニズムとは?

雲一つない空を見上げたとき、誰もが「空が青い」と思います。しかし、あなたの目に映っている青空と、私の目に映っている青空が、全く同じ色だと証明することはできません。色を感じとり見分ける力を「色覚」といいますが、人は互いに他人の色覚を感じ取ることはできないのです。

いわゆる”普通の”色彩判別能力を持つ人を「色覚正常」、そうでない人を「色覚異常」「色盲」などと呼ぶ時代が長く続きました。網膜上にあるセンサーのはたらきをする錐体細胞の違いによって色の見え方は異なります。これはほとんどの場合、遺伝による先天性のものです。私はアジア系で、血液型O型ですが、持って生まれた色覚もこれらと同じ。生まれもった特性であり欠陥や病気ではないのです。

出典:カラーユニバーサルデザイン機構

持っている錐体の種類によっては、緑系と赤系が同じ色に見えたり、ピンクとグレーが同じ色に見えたりします(このような色覚を持つ人を「色弱者」と呼びます)。例えば、黒板に赤いチョークで書かれた文字は見えづらくなったり、逆に白いチョークとの区別がつきづらくなることが起こります。そして、このような見え方をする人の割合は、日本人男性の約20人に1人(日本人女性の約500人に1人)。決して希少な存在ではないのです。色覚の多様性を前提とした上で、色の見え方の違いを補い合えばいい。そんな考え方が広がりつつあります。

出典:カラーユニバーサルデザイン機構

何を隠そう、私の親族にも何人か色弱者がいます。色弱者の遺伝子はX染色体に存在するのですが、私の場合は母方の遺伝ということがはっきりしているので、私自身も50%の確率で保因者(色弱者ではないが、色弱者の遺伝子を持つ女性)ということになります。色弱者ではない夫との間に男の子が生まれてから、私は強く「色覚」を意識してきました。私が保因者だった場合、私の息子もまた50%の確率で色弱者になるからです。もしも、息子の目が特定の色を区別できていないと気づいたときには、フラットな気持ちで彼が見ている世界を受け止めてあげたい。ずっとそう思って暮らしてきました。色覚の違いは、多様性のひとつなのですから。

どんな見え方の人にも情報を伝えるカラーユニバーサルデザイン

人間の色の見え方は、大きく分けて5タイプに分けることができます。それぞれの色覚型によって色の感じ方は異なりますが、どのような人にも情報を正しく伝えようと配慮されたデザインのことを、カラーユニバーサルデザイン(CUD)と呼びます。これは、2004年に設立されたNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構 (CUDO)が提唱した名称で、CUDに適合していると認められた製品には、CUDOから認証マークが与えられます。

CUDマーク

駅の路線図、テレビのリモコン、ニュースの警報表示など、私たちの周りはカラフルな表示で溢れています。色で情報が分かれていると、一目で直感的に判別することができてとても便利ですが、人によっては特定の色の区別がつかず、文字情報が背景と一体化して読むことができないかもしれません。それでは、意味がありません。より多くの人が正しく見分けられるデザインを実現する必要があるのです。そこで、提案されているカラーユニバーサルデザインのポイントは、以下の3つ。

◇出来るだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ。
→配色については、「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット」をご覧ください。
◇色を見分けにくい人にも形の差などで情報が伝わるようにする。
◇色名を添えるなど色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする。

カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットのような見分けやすい色を使うだけではなく、形で見分けられるようにしたり、色の隣に「赤」など文字を表示したりCUDの方法は1つではありません。

CUDマークを取得した広島信用金庫の伝票(4種類)のデザイン。区別のつきやすい色づかいに加え、伝票ごとに番号や色の名前等も記載し、数字や色名を用いたコミュニケーションを可能に。

数年後にオリンピックや万博を控え、日本全体でバリアフリーを推進していかなければいけない中、カラーユニバーサルデザインの重要性もますます高まるはずです。「色の見え方は、人それぞれ」ということを少しだけ意識して、身の回りにあるものに反映されているCUDに注目してみてください。きっと、様々な発見があるはずです!

NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構

公式サイト:http://www2.cudo.jp/wp