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【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合

| めがね新聞編集部
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めがねが大好き!
でも、なかなかそんなことを話せる場所もなければ、相手もいない…。
ならば、「めがね新聞」で思う存分語っていただきましょー !! という企画が始まりました。題して「わたしはめがねのここが好き!」。

栄えある第1回は、「強度の近視のため、寝るとき以外めがねは外しません! 一度コンタクトに浮気したけれど、やっぱりめがねに帰ってきまた!」という日本画家・山口健児さんにインタビューしてきました。

現在、“新宿クリエイターズ・フェスタ”の一環として、ハイアットリージェンシー東京に作品が展示されている山口さん。創作にも、めがねが大きく影響しているということです。それは、一体どんなことなのでしょうか!?

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合

トラウマとなった、初めてのめがね

山口さんがいまかけているめがねは、オクタゴン型(フレームが八角形のかたち)ですね! オクタゴン型を選んでかけているあたり、なかなかのめがね上級者ですねー。

山口このめがねは、子どもとの会話のきっかけにもなるんですよ。僕は「子ども絵画教室」も開いているので、めがねをきっかけに子どもとコミュニケーションをとれるのはいいなと思って。僕のめがねをじっと見つめて、「…丸じゃなーい!」って言って、角を数え出す子どももいたりして(笑)。

めがねが、コミュニケーションの糸口になるんですね。確かに、山口さんのめがねは一見丸っぽいですが、よくみると八角形というフレームですね。子どもにとっては、不思議な形に映るのかもしれません。

山口めがねを選ぶときに、僕がポイントにしていることがあります。それは、顔に馴染むんだけど、よく見ると「あれ?」っていうデザイン。強く主張しすぎていない、だけど気づきがある、というのはおもしろいなと思います。

「主張しすぎないけれど、よく見るとポイントのあるデザイン」ですか。そういうめがねを選ぶようになったきっかけって、あるんですか?

山口それは…僕が初めてかけためがねですね…。

初めてかけためがねが、そういうデザインのめがねだったということですか?

山口その逆で、僕の気に入ったデザインでは全くなかったんです。子どもながらに「このめがねを、かけるの…?」って思いましたね。いまでもそのデザインを忘れられません。上のところが赤くて、下の方が透明で…多分女の子用のめがねだったんでしょうね。僕が小学2、3年生の頃だったので、当時は子ども用めがねの種類がなく、選べなかったんです。

なるほど…「お気に入りではないめがね」という原体験から、いまの山口さんの“めがねへのこだわり”ができたんですね。

山口中学生になって買い換えたのですが、その時は自分の好きなめがねを選べたので、開放されたようで嬉しかったですね。

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合

そのときは、どんなめがねを選んだんですか?

山口銀縁のめがねです。なんだかホッとしたのを覚えています。その最初のめがねの思い出があるので、めがねは自分が納得できる、そして見ていても飽きないデザインを選びたいなと思っているんです。

「めがねは、顔の一部」ですからね。

山口このめがねは家族と一緒に選びました。めがねをかけている僕を見るのは、僕よりも家族じゃないですか。だから、家族にも馴染むようなめがねにすることも大切だと思うんです。

それは、新しい視点ですね! そうですよね、自分で自分の顔は始終見ないですが、多くの時間を共にする人は「めがねを見る側」になります。そういう人の意見は、想像以上に大事かもしれません。

山口あと、僕は極度の近視なので、めがねを試着して鏡を見ても、よくわからないんですよね(笑)。それもあって。

家族みんなで、お父さんのめがねを選ぶって幸せな光景ですね。

山口僕の家族は、全員めがねなんです。

めがね一家でしたか!

山口僕にとってめがねは、子どもや家族のコミュニケーションツールにもなっているんです。

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合

自分を「発見する」

山口さんは東京芸術大学美術学部を卒業後、日本画家として活躍されています。その一方で、先ほどおっしゃられていたように、子どもを対象にした絵画教室なども開催されていますね。今回、取材させて頂いているこの会場も、「こどもアート」というイベントの場です。様々なアーティストが、子どもとワークショップをするというイベントの中で、山口さんは「夏・金魚を作ろう」体験を提供するんですね。

山口透明な折り紙をつかって、ゆらゆら揺れる金魚をつくってもらいます。僕が、子どもと一緒に創作するときに大事にしているテーマは、「発見」です。創作をしていると「こうすれば、もっと簡単にできる」とか「もっと面白くつくれる」などといった発見が多くあるんですね。その「発見」という体験を、子どもにしてもらいたいと思っています。

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合

何かをつくるときは、いろいろ自分で工夫を重ねていきますよね。

山口だから、最後までつくりあげられなくてもいいんです。そういう発見することの楽しさを知ってもらえたら、それを「日常生活での発見」に活かせることができると思います。

なぜ、山口さんは「こどもアート」や絵画教室のように、子どもにアート体験を伝えたいと思ってらっしゃるんですか。

山口僕は、子どもの頃、人と話すことがあまり得意ではありませんでした。親が入退院を繰り返していて、一人でいることも多かったんです。だから、人前で感情がだせなかったり、何かあったときに相談することができなかったりしました。そのときの僕にとっての楽しいことは、「絵を描くこと」「歌をうたうこと」「本を読むこと」でした。そういう自分を助けてくれた楽しみや、子どもにとって楽になれる場所を提供できたらという想いで、始めました。

山口さんの体験からなんですね。

山口僕は子どもの頃に絵画を習っていたわけではないので、最初は教えることに戸惑いもありました。この「こどもアート」は僕がちょうど絵画教室を開いた時期に版画家の蟹江杏さんに声をかけられて参加したんです。だから、ここは僕にとって「子どもと一緒に創作する」ということを学んだ、気づきの場でもあるんです。

ここから、子どもたちと触れ合う機会がたくさん増えていったんですね。子どもと創作することで、山口さんご自身が発見したことはありますか?

山口アートと触れ合う子どもたちの嬉しそうな顔を見ると、「ここは子どもにとって必要な場なんだ」と改めて感じることができました。それが僕にとっての発見ですね。いまは、学校でも美術教育の場がどんどん削られてシステム化しています。だから、「もっと楽しんで好きにやっていいんだよ」ということを伝えられる、こういう場所が必要だと思います。

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合

めがねで、世界の見え方が変わるんだ!

小学生からめがねをかけている山口さんですが、めがねをかけていて「発見」したことって、ありますか?

山口めがねのフレームの色って、視覚ギリギリのところにあるので、実は日常にかなり影響があると思います。例えば、黒い縁のフレームをかけていた頃は、僕が黒い額縁の中に世界を見ているような気持ちでした。めがねのフレームの色によって、世界の見え方が変わるんです。

その視点は驚きです。やはり、視覚の中にあるわずかな色でも、繊細に山口さんは捉えられているんですね。

山口何か対象を見て、それを描くとき、その対象の色をしっかり捉えようと思うと、めがねのフレームの色はあまり強くない方がいいんです。だから、僕の活動において、めがね選びは重要なんです。

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合
【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合
山口さんの作品「rev.#12」

言われてみれば、めがねのカラーが自分の視覚に影響しているかもしれませんね。

山口一時期、フレームのないタイプのめがねをかけていたんですが、そのときはフレームのあるタイプより、めがねの横から光が入りやすくて、見ているものが普段より明るく見えてしまいました。だから、フレームのあるめがねに切り替えましたね。フレームがないめがねだと、周りが光って見えることがあるんですよ。

めがねを通して、山口さんの視覚がどれだけ繊細なのかがわかります。そして、わたしの視覚がとても凡庸(ぼんよう)であることもわかります…。そんなこと思ったこともなかったです…。視覚表現のアーティストにとって、めがねはとても重要なアイテムですね。

山口学生時代から、ものの色を表現したいという想いが強くあります。だから、なるべくそのものの色をそのまま受け取れる状態にしたいので、そこがめがね選びのポイントにもなります。

めがねによって、見える世界が変わってくるということですね。

山口めがねを通してしか見えない世界もあるかもしれないとも思いますね。

画家ならではの視点ですね! 山口さんのお話から、新しいめがねへの発見がたくさんありました。今日は、ありがとうございました。

【わたしはめがねのここが好き!】第1回 日本画家 山口健児さんの場合
8月に開催された今年活動20周年を迎えた版画家蟹江杏さんプロデュースによる「こどもアート」イベントは、新宿で7回目、練馬で2回目の開催でした。
なんと新宿は3000名、練馬は7000名の親子が参加されたとのこと。
写真は練馬「こどもアートアドベンチャー」の集合写真(2018年8月22日開催)。山口さんの取材はこのイベント前日に会場で行いました。

山口健児(やまぐち けんじ)

<プロフィール>
1965年生まれ。東京芸術大学美術学部絵画学科日本画専攻卒業後、日本画家として活動。日本画の画材の他に、様々な素材を使用した抽象画を制作している。子どもを対象にした絵画教室や工作教室なども精力的に開催している。蟹江杏プロデュース「こどもアート」参加アーティスト。現在、新宿クリエイターズ・フェスタ内アーティスト展『山口健児 – behind the black -』が好評開催中。(ハイアットリージェンシー東京1F 10月8日まで)

めがね新聞編集部
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