あなたの変化に、そっと寄りそう

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【伊藤美玲のめがねコラム】第47回「CUTLER AND GROSSデザイナー Marie Wilkinsonさんインタビュー」

【伊藤美玲のめがねコラム】第47回「CUTLER AND GROSSデザイナー Marie Wilkinsonさんインタビュー」

| 伊藤 美玲
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先日、CUTLER AND GROSS(カトラー アンド グロス)のデザインディレクター、マリー・ウィルキンソンさんに取材する機会をいただきました。

カトラー アンド グロスは、イギリスを代表する老舗アイウェアブランド。オプティシャンであったグラハム・カトラー氏とトニー・グロス氏によって1969年に設立されました。1970年代の英国カルチャーを反映したアイテムを展開し、めがねをファッションアイテムとして根付かせた立役者ともいえる存在です。映画「キングスマン」シリーズで採用されていためがね、といえばイメージが湧く人も多いかもしれません。

創業者2人のもとでデザインを学び、現在もデザインディレクターとしてブランドを率いるマリーさん。ご自身のこと、そして女性ならではのめがねの楽しみ方などについてお伺いしました。

創業者との出会いにより、デザインの道へ

マリーさんは、オプティシャンとしての勉強を終えたのち、友人の紹介でグロス氏に出会い、カトラー アンド グロスのショップで働くことに。ロンドンのナイツブリッジにあるショップは、1階が売り場、2階は工房になっていて、ビスポークを中心としていたそうです。

「グロスはとてもエキセントリックで、普通のめがねショップの仕事を退屈に感じていたんです。だから自分でデザインを考え、フレームのディテールにまでこだわって、それぞれのお客さんに似合うものを提供していたの。そんな彼と出会ってめがねの概念が変わり、私も販売だけでなくデザインに携わることになったんです」

そうして、日々ショップに立ちながら、同時並行で創業者の2人からデザインを学ぶことに。数年後には、彼らからデザインを一任されるようになりました。

“ちょっと高めのハイヒール”のようなデザイン

カトラー アンド グロスは毎年多彩な新作をリリースしていますが、いずれもブランドの“らしさ”がブレることがないのが特徴。伝統を守りながら新しいものを作り出すというのは、難しい作業ではないのでしょうか。

「難しいことではないわ。私は初めからずっと、カトラーとグロスと一緒にめがねを作ってきたから、彼らのテイストは私のテイストでもあるんです。それに新作はどれもブランドの膨大なアーカイブを参考に作られているの。ロンドンのオフィスには過去のアーカイブが並んだ部屋があるんだけど、ここは私の原点であり、ほっとできる場所。そして新しいコレクションが生まれる場所でもあるのよ」

では、マリーさんが考えるカトラー アンド グロスの“らしさ”って?

「まず、めがねとしてのクオリティが高く、かける人にフィットすることが大前提。それでいて遊び心があって、少し高めのハイヒールを履く感じかしら。ちょっと背伸びをするような感覚ね。街ですれ違ったとき、『あの人、お洒落だな』って思わず振り返ってしまうような、素敵なものを作りたいと思っているわ」

なるほど、わかります。カトラーのフレームは、「このめがねに見合うよう、もっとお洒落を頑張ろう」と思わせてくれるパワーと魅力がある。背筋がピシっと伸びる感じ。きっとそれが、マリーさんの言う“高めのハイヒール”ってことなんじゃないかな。

今シーズンの新作は、これまで通りトラディショナルなものに加え、‘80年代のテイストを感じさせるサングラスも。過去のデザインに敬意を払いながら、今の時代感や新たな技法を取り入れるなどチャレンジングな姿勢も感じられます。

「‘80年代というのは、カトラー アンド グロスにとってものすごく重要な時代。とてもエキサイティングで、その時代のセレブは皆カトラー アンド グロスをかけていたの。お店の前に行列ができることもあったぐらい。当時インスタグラムがあったら、きっと多くの人がアップしていたはずだわ(笑)」


めがねを起点に、お洒落を楽しむ

取材が始まる前、私が持参した日本のめがね雑誌を見せると「女性がほとんど載っていないのは残念ね」とひと言。たしかに、女性にとってのめがねの情報は、まだまだ多いとは言えません。「それを、あなたが変えてくれるのよね?(笑)」と、マリーさんには言われてしまったけれど……(汗)。

「最近イギリスでは、仕事のときだけでなくナイトシーンや遊びに行くときも、自分を表現するアイテムとしてめがねをかける女性が増えています。ニュースキャスターの女性でも、めがねをかける人たちが増えているわ。とくにカトラー アンド グロスは、自分を少し強く見せたい、というときに選んでもらうことが多いのよ」

そう、カトラーはかける人に自信を与えてくれるめがねでもあります。とても個人的な話ですが、私はライターとして独立して5周年の記念に買っためがね、そして自分の結婚式のときにかけためがねが、カトラーなんです。ブランド先行で選んだわけではないのに、結果としてこうなったのは、何か感じるものがあったからなのでしょう。

そして、そんなカトラーのかけこなしで一番のお手本となるのが、マリーさんご自身。海外の展示会でお見かけするマリーさんは、インパクトの強いフレームを、自分のスタイルでお洒落にかけこなしている姿がとても印象的で。そんな彼女は、自分自身でかける度付きのものと、デザインのインスピレーションとするためのヴィンテージフレームとで、合計205本所有しているのだとか。

「なかでも、普段かけているのはアセテートのキャットアイが多いわね。キャットアイは、ヴィンテージな雰囲気とモダンな印象とを持ち合わせているところが好きなんです。朝起きたら、まず最初にその日かけるめがねを決めるの。それが1日で一番重要なことね。食事も大切だけれど、朝食のメニューを決めるよりも先に、まずめがね(笑)。それに合わせて、服をスタイリングしていく感じね。ヘアサロンに行くときは、前髪の長さをその時期かけるめがねの大きさに合わせてもらうのよ」

【伊藤美玲のめがねコラム】第47回「CUTLER AND GROSSデザイナー Marie Wilkinsonさんインタビュー」

髪型とめがねの相性はたしかに重要。マリーさんは現在のシャープなボブにヘアスタイルをチェンジしてからは、ラウンドフレームも楽しむようになったそうです。さらには、こんなこだわりも。

「フェミニンなめがねをかけるときは、靴はマスキュリンなものに。反対にめがねがマスキュリンなときは、靴を女性らしくね。そうした相反するテイストを組み合わせて楽しんでいるわ。髪型も小物選びも、すべてはめがねが起点になっているんです」

取材当日は、直線的なトップリムが力強い、深いパープルのフレームを着用。バッグも同じパープル系で合わせ、足元はファーのついたサンダル+シースルーの水玉ソックスというコーディネートでした。太陽がサングラスをかけている柄のワンピースも素敵で。自分らしいお洒落を楽しんでいる感じがとても伝わってきて、本当に憧れます。

では、最後に女性がめがねを楽しむためのアドバイスをお願いします!

「たとえばメイクのように、ヘアスタイルや服などとバランスを取ること。後からめがねを取ってつけたようにならないよう、全体のまとまりを考えることが大切ね。あとは、アイウェアのセレクトショップなどで、スタイリッシュなスタッフからアドバイスを受けるのもオススメ。お店にお洒落なスタッフがいたら、私も話を聞いてみたいと思うもの。エキスパートからのアドバイスはきっと参考になるはずよ」

インタビューを終えて

当日、通訳の方が来るまで私のつたない英語での会話に付き合ってくれたマリーさん。本当にチャーミングで優しい方だなと感じました。一方で、芯の強さも感じられて。

自分の確固たるスタイルを持っている人は、本当にカッコいい。“めがねのお洒落をどう楽しめばいいか”なんて質問は野暮だったかな……とも思ったり。

男性にはもちろん、女性にももっとめがねを楽しんでほしい。マリーさんと約束したように、女性に向けてのめがねの情報を、これまで以上に発信していきたい。改めてそう思ったのでした。

CUTLER AND GROSS(カトラー アンド グロス)

オフィシャルサイト:
https://www.cutlerandgross.com/

伊藤 美玲
出版社に勤務した後、2006年にフリーライターとして独立。 眼鏡好きが高じて展示会やショップを訪れるようになるうち、 仕事のフィールドが眼鏡中心に。現在は数少ない眼鏡ライターの 一人として、国内外の展示会や工場の取材、デザイナーへの インタビューなどを行ない、眼鏡専門誌やモノ雑誌を中心に執筆中。(Profile