【伊藤美玲のめがねコラム】第63回「子どものサングラス、どう選ぶ?」
目次
そろそろ夏休み。海に山にフェスにと、外遊びが増えるシーズンとなります。私はもともとインドアな人間なのですが、子どもができてからそうも言っていられなくなりました。とくに今年は外遊びのお誘いもちらほら。紫外線対策が必須です。
サングラスを用意して、日焼け止めを塗って、帽子をかぶって……。昨年の夏、慣れない外遊びの準備で必死になっているとき、ふと思ったわけですよ。子どもにはサングラスなくて良いのかなと。
そんなわけで、子どもにサングラスを用意しようと、めがね店や百貨店の子ども用品フロアなどを回ったのですが……。少ない。とにかく子ども用サングラスの種類が少なかったんです。
レンズの形がハートや星になっていたり、可愛い飾りがついているようなものは見かけるのですが、軽さやフィット感など“掛けやすさ”も備わっているものを探そうとなると、これが難しい。そんななか、子どもめがね専門店でようやく私も子どもも「これなら」と思えたのが、トップ画像にあるポラロイドの偏光サングラスだったのでした。
やはりまだ日本では、子どものサングラスの需要が少ないのでしょうか。そして、そもそも子どもにサングラスを選ぶときは何を基準にしたら良いのか。などなど、子を持つ親としてもいろいろ知りたくなったので、お店に話を伺うことにしました。
今回取材を引き受けてくださったのは、江戸川区瑞江にある「こどもの眼鏡屋 フェイスオン瑞江店」の松井真愛さんです。ここは、お店にある商品すべてが子ども用。めがね、サングラスはもちろん、スポーツ用のゴーグルタイプのフレームも揃い、都内最大級の品揃えを誇っています。しかもここでは、子どもがめがねを作る際に、レンズの加工機などを操作させてもらえる“めがね作り体験”ができるなど、子どもがめがねを楽しんでかけられるような取り組みも行なわれています。
では、早速本題へ!
夏レジャーの際はぜひ目も紫外線対策を
子ども用のサングラスについて、お店での動きはいかがですか?
松井そうですね、年々需要が増えているなと実感しています。まず、親御さんの紫外線対策への意識が変わってきていますね。たとえばこれからの季節、家族でリゾートに行かれる方も多いと思うのですが、ガイドブックには紫外線対策として日焼け止めやサングラス、帽子を持っていくように書かれたりしていますよね。「大人が必要ならば子どもにも」、と思われる方が多いようです。
たしかに、ここ数年はテレビでも「目から日焼けする」といったような情報をよく耳にするようになりました。とはいえ、私の世代はそうした情報もなく、紫外線を浴びて育ってきました。実際のところ、子どもにサングラスは必要なんでしょうか?
松井一般的に、 人間が一生のうちに浴びる紫外線量のうち、50%は10代までに浴びると言われています。また、オーストラリアでは通学の際にサングラスの着用を義務付けている学校も。眼科医の方の意見は様々ありますが、やはり子どものうちから紫外線対策は必要であると思います。もちろん日本では通学のときまでは必要ないと思いますが、海や山でのレジャーなど長時間外で過ごすようなときには、眼病予防のためにも紫外線対策をしたほうが好ましいでしょう。
長時間外で遊ぶときは、対策するに越したことはなさそうですね。
松井あと、最近増えているなと感じるのが、紫外線アレルギーのお子さんです。この場合通学時など日常生活でも紫外線対策が必要となりますが、サングラスには抵抗があるという場合には、紫外線カット性能のあるクリアレンズを入れためがねをお勧めしています。眩しさは防げませんが、紫外線カットという目的ならば、めがねも有効です。
快適に掛けてもらうためにもサイズをチェック
では、実際にサングラスを買う場合、選ぶ際のポイントを教えてください。
松井まずレンズに関しては、紫外線カット性能があるものというのが大前提ですね。これについては「UV400」、もしくは「紫外線透過率1.0%以下」とタグに記載があるものを選ぶようにしてください。
タグの表示には「ファッション用グラス」や「サングラス」と書かれているものがありますが。
松井これは、レンズの屈折力と平行度によって規定されるものなので、紫外線カット率とは話が別です。サングラスと書いてあるものが好ましいですが、ファッション用グラスと表記されたものが一概に性能が悪いわけではありません。その表記だけに頼るのではなく、信頼できるスタッフがいるめがね店で相談していただければと思います。
なるほど。では、フレームに関して選ぶコツを教えてください。
松井まず重要なのが、その子に合ったサイズのものを選ぶということです。サングラスのサイズが合わずにズリ落ちてきたりすると、それだけで「邪魔だからかけたくない」と思われてしまいかねません。まずは、お子様の鼻の高さに合っているかどうか。
そしてテンプルがしっかりフィットしているかどうかをチェックしてください。テンプルは顔幅に対してキツ過ぎても緩過ぎても不快に感じます。ある程度調整ができるデザインならベストですね。あと乳幼児さんの場合、柔らかな素材のものがお勧めです。
なかなかそうしたことを親がお店でチェックするのは難しそうです……。
松井そうですよね。やはりサイズ感などをきちんとチェックしてもらえるという点でも、専門店が安心です。購入後のメンテナンスなどにも対応してもらえます。
子どもは掛け心地についてなど自分ではうまく伝えられないから、プロの目で客観的にチェックしてもらったほうが安心ですね。では、子どもにサングラスを積極的にかけてもらえるようにするコツはありますか?
松井ひとつは、先ほどもお話ししたように、快適にかけられるものを選ぶということですね。あとはお店で見ていると、ご両親が普段からサングラスをかけていると、お子さんも積極的にかけたがることが多い傾向があります。
反対に、お子さんが最初に掛けたときに親御さんが笑ってしまったり、「なんか変だね」などと言ってしまうと、マイナスのイメージが付いてしまいます。もちろん似合わないものは避けていただいたほうが良いですが、「カッコいいね」「かわいいね」と褒めてあげることで、喜んでかけてもらえると思いますよ。
プールには度付きのゴーグルを
ちなみに度付きのサングラスの需要はありますか?
松井ないわけではないですが、まだ少ないですね。度付きのめがねを使用しているお子さんは、そのめがねで紫外線対策ができているので、それなら問題ないという方が多いです。一方で夏になると需要が増えるのが、度付きのスイミングゴーグルです。
なるほど! たしかに子どもは“コンタクトを付けてゴーグルを着用”ということができないですもんね。
松井そうなんです。たとえば「この時計の針が0になったらスタート」などと言われたとき、時計がぼやけて見えないというお子さんも少なくないんです。
めがねのように度数を計測して作ることもできるんですか?
松井度数をお測りしてオーダーするものもありますが、あらかじめ度数の入ったタイプもあって、自分の度数に近いものを片眼ずつ選ぶことができます。オーダーのほうが望ましいですが、お値段が張ってしまうので、学校の授業などで短時間使うだけであれば出来合いのものでも問題ないと思います。ちなみに、空気中と水中では光の屈折率が違うため、普段お使いのめがねより度数を下げて選ぶことをお勧めしています。どの程度下げるかは、お店で相談してもらえたらと思います。
なるほど、そうなんですね。紫外線カット機能のあるゴーグルなら、プールでの紫外線対策にもなりそうです。
松井そうですね。これから夏休みで外遊びの機会が増えると思いますので、めがねやサングラス、ゴーグルなどを活用してお子様の目をぜひ守ってあげてください。
取材を終えて
お話しのなかにもあったように、ここ数年で紫外線への意識が少しずつ高まってきているのは私も実感しています。“サングラスを選ぶときは、「UV400」の表示があるかをチェック”といったことが書いてある記事もよく目にするようになりました。
ただ一方で、そればかりが基準として独り歩きしてしまうのも考えものです。最近では100円ショップで売られているサングラスにもUV400の表示があったりするので、「だったらそれでOK」と思ってしまう人も少なくないのではないかと……。とくに子どもはすぐ壊しちゃったりするわけで、なるべく安いもので済ませたいと考える親は少なくないでしょう。
でもいくら紫外線カット性能があっても100円ではレンズの質が良いわけがないし、フレームの質だって不安です。何より相談できる店員さんもいない。洋服のセレクトショップや雑貨店などでも可愛いものを見かけるけれど、フィッティングやメンテナンスまではお願いできないでしょう。
外遊び用として長時間使うことを前提としているのなら、やはりめがね専門店での購入が安心だなと改めて感じました(おもちゃとして使ったり、かけて写真を撮ったりするだけなら、もちろんその限りではないですけどね)。
子どものために良かれと思って買ったサングラスが、逆に眼の負担になっていた! なんてことになったら、親としては悔やみきれません。親子でしっかり目の紫外線対策をして、夏のレジャーを安心して楽しみたいですね。
今回はレジャーでの使用を中心に話を進めましたが、スポーツ用など、その他のサングラスについても取材を続けていこうと思います。
フェイスオン瑞江店
【住所】東京都江戸川区瑞江3-36-8
【TEL】03-3677-2683
【営業時間】平日11:00~20:00 土日祝日10:00~20:00
【定休日】毎週水曜日
東京都生まれ。出版社勤務を経て、2006年にライターとして独立。メガネ専門誌『MODE OPTIQUE』をはじめ、『Begin』『monoマガジン』といったモノ雑誌、『Forbes JAPAN 』『文春オンライン』等のWEB媒体にて、メガネにまつわる記事やコラムを執筆してい る。TV、ラジオ等のメディアにも出演し、『マツコの知らない世界』では“メガネの世 界の案内人”として登場。メガネの国際展示会「iOFT」で行われている「日本メガネ大賞」の審査員も務める。